𐎢‎𓊆91録𓊇𐎽 DECEIVING of GLUTTONIY 〘☩〖TWO〗☩〙


「あぁ…………怖」


「入口から既に怖いわ。何やねん、この文字。楔形文字で赤いペンキで上書きしているのが不気味だわ」


「生身でホラゲというデスゲームやらないといけないの、ガチでしんどいんだけど。主にメンタル的に」


「VTuberメインでやりたいっていう人間に………そして、この世界に来てから2ヶ月も経っていない人間に、こんな無茶苦茶な依頼を押し付けるもんかね?」


「前世の時もあったやん。CRY.STi⟬A⟭LLIZATION下積み時代よりはマシじゃね?」


「確かに、めちゃくちゃ忙しかったけど…………ここまで命の危険は感じてなかったわ」


「まぁ、ここにずっと居るのもなんなんで。早く終わらせてチャチャッと帰りましょうや」


「そうだね」



楓夏依がそう言ったので、正門から工場の本館へと続く中庭の石畳を歩いていって、既に壊れて開かなくなっている半開きの自動ドアに、刀に変化させたUSBメモリをテコの原理で無理矢理こじ開ける。








___ガリガリガリガリ………









「ふんっ!!」


「開かない自動ドアを無理矢理こじ開けるの、強盗になった気分になるね」


「廃墟に無断で侵入するのも不法侵入になるのかな?」


「·············································さぁ?」


「でも、何かの法には触れそう」


「それな」



廃墟に勝手に入った場合に触れる法律を知っている方、🌟 3つとお気に入り登録ついでにレビューのところに書いてくださると有難いです。


今の私達、一個一個法律を調べている余裕は無い………というわけではないですが。


これから殺しの仕事をやるというのに、廃墟に入った時に触れる法律なんだろうと怯えているのはおかしいか。


仮に触れてしまったとしても、クエストバーサーカーの仕事で来ていますという証明をすれば大丈夫だというのはあるので、何かを突っ込まれ場合は身分証を見せれば何も問題は無い。


法律を度々気にするあたり、まだ前世の時の感覚が残っているのだなと思う。法治国家に20年以上生きてきて、染み付いてきた感覚というものは、まだまだ抜け切るまでには時間を要しそうだ。









___ォォォォ………ォォォォォンッ………ガタガタガタガタ………








「い"っ……!!ちょっ………!!ゆみり!!」


「うわっ!!何!?」


「なんか、左の方からガタガタガタガタって音が聞こえてきたんだけど……!!!!えっ!?なんか、出てきていません!?」


「痛い痛い…………か、楓夏依………に、二の腕が···············私の二の腕が千切れるから………加減して、加減して··········」


「あっ、すまん」



楓夏依のヤツ……奥の方から物音がして、それにビビって私の二の腕をガッチリと掴んで………それも、私の二の腕を引きちぎろうとでもいうのか?という馬鹿力で。


これ、痣になっているかもしれない。それくらいの激痛が私の二の腕に走った。爪を立てて掴んできやがったのもあって、絶対に跡になっているな……


風呂入った時に確認して、跡やら痣やらになっていた時は治癒魔法で適当に治せばいいか。






___ガタガタガタガタ……ギギギギギ………








「歯車の音………?何かの、機械が動いているのか……?」



元から何があるか分からないという心構えをしていたので、私自身は恐怖心をある程度は殺すことが出来ている…………が、で、機械が稼働している音が聞こえるということ自体がおかしい。


乙女な部分がある楓夏依には怖くて仕方無いだろう。ホラゲNGを本気で出してしまうほどにホラーというものに耐性が無い。


CRY.STi⟬A⟭LLIZATIONの時は社長に直々に「ホラゲ実況NGで」ということを言ったが、私が承諾するわけがなかった。


本気で怖がっているところをリスナーは見たいに決まっているのだから、勝手なことをして収益を下げようとした楓夏依にペナルティとして、私と一緒に適当なホラゲの実況をさせた。


ポピープレイタイムじゃない、日本で作られたホラゲをメインでやらせて発狂させたのは良い撮れ高になった。


楓夏依の………ユキの咆哮集というような形で切り抜きでまとめられていた。動画のタイトルが「鏖魔ツキシマユキの咆哮集」という、同期で爆笑物だったところから始まり………本当に鏖魔ディアブロスを彷彿とさせる咆哮が揃えられていた。


リアルタイムで横で聞いていた時は自分の笑い声と混ざりあってて、そこまで楓夏依の咆哮には意識が向いていなかった。


実際に動画として見てみると、しっかりとディアブロスだった。声の低さも相まって、時折ティガレックスに聞こえている時もあった。



今回の依頼の中でも、化け物のような咆哮を繰り出すだろう。高級耳栓は携帯していないので、耳を抑えるしか鼓膜を守る術がない。



敵の咆哮で鼓膜がやられるのはまだしも、味方のビビった時の悲鳴で鼓膜がやられるのは………避けたいな。

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