𐎢‎𓊆31録𓊇𐎽 Keep the faith


私達は総督府のすぐ近くにあるコンビニ立ち寄って、楓夏依のタバコの調達に付き添った後、近くのラーメン屋に向かった。


サクッと食べられるものでいいかってことになりまして。かと言って牛丼を食いたいという気分では無かったので、とりあえず近くに見えた家系ラーメンでいいかという楓夏依の要望で決めた。


食えれば何でもいいかって思っていたところだったので、そういう状態でサクッと場所を提案してくれる人が居るのは助かる。



ラーメン屋に入って食券を買って、テーブル席に座って、ラーメンが出てくるのを待つ。

楓夏依は買ったばかりのタバコをズボンのポケットから取り出して、私の襟を軽く掴んで「お前も行くぞ」と外に連れ出された。


タバコくらい、一人で吸ってくればいいものを………外ですぐの、出入口の自動ドア付近に赤い灰皿が置いてある。


入口付近の角のテーブル席を取ったのは、楓夏依がタバコ吸いたくなるだろうからというので、少しでも喫煙所が近い方が良いだろうと思って座ったのに。


吸いたくなったら、一人で勝手に吸いにいってくれっていうことを見越しての席取りだった。

第一、禁煙している元喫煙者っていうのがある人間に対して普通にタバコを誘うなって。………って、言っても普通に誘ってくるし、あまりに断ると「うぅ〜(⑉・̆-・̆⑉)」みたいな不貞腐れた顔をする。


普段はオラオラ系というか、チャラ男みたいな振る舞いをしているくせに、そういう時にあざとい女のような事をやり出すのは反則過ぎる。


そんなことをされたら「いいよ」って了承したくなってしまうだろう。私、チョロいところはチョロいのだから。



今日はもう、戦いの疲れもあり………対抗する言葉も思い付かず、抵抗する力も湧いてこなかったので、ほぼ無抵抗で外に出ていってタバコを咥えさせられた。







___シュボ………チリチリチリ………










「…………………んっ、タール強いな」


「タールとニコチンの含有量書いてあるっぽいんだけど、何て書いてあるか読めねぇんだ」


「言うてもセブンスターくらいだろ」


「確かに、セッターくらいかもね。吸った感じもセブンスターって感じがする」


「普段パーラメントだもんね」


「ここ最近はずっとパーラメントを吸ってるね」


「ココ最近というか、ずっとでしょ?2年くらい」


「あー、もうそんなになるんか。パーラメントの前、セッター吸ってたけど………あれ?そんなに経つんだね」



………どうでもいいことかもしれないが、セブンスターっていうのか、セッターっていうのか、それはどっちかに統一した方がいいような気がする。


タバコ吸っている人なら、セブンスター=セッターという、同じ銘柄の事を言ってるってすぐに分かる……と思われる。


いや、セッターってあんまり言わないのかな?たまに言う人に会うけど、基本的にセブンスターはセブンスターって言ってる人の方が多いイメージ。私の周りの体感では。



それと、楓夏依タバコの吸っている銘柄…………実は、セブンスターからパーラメントまでの移り変わりまでも私と同じだ。


私が何の銘柄を吸っていたのかを聞いてきて、最初にセブンスター、その後にパーラメントを吸って……高いから安いタバコに買い換えて。


Vデビューするという理由の他に、そこまで気を遣うのもアホらしいというのもあったのも禁煙の理由の一つだった。


意外と金とかは気にしなかったな……声を使う仕事だからと言ってタバコを止めたけど、禁煙以外の喉のケアをやっていたのか?と聞かれたら、何にもしていなかった。普通に配信中に酒飲んだり、配信終わりに次の日休みとなれば、楓夏依達とカラオケに行って全力で歌ったりもした。


そんなことをやっていても声が枯れるという事は無かった……ね。そんな簡単に潰れるような声帯を持っていたら、当たり前のように耐久配信をするようなVTuberは向いていない。声を使う仕事そのものが向いていない。


喉のケアも大事だが、忙しくなってくると十分なケアなんて出来るわけが無い。そうなると、少しケアをしていないくらいで壊すような喉だと仕事にならない。続けることが難しくなってくる。


声を使う仕事………声優さんとか歌手とか、VTuber以外での配信者にも言えることかもしれないが、ちょっとした事で声が枯れたり、念入りなケアが必要な声帯を持っているっていう人の場合は…………仮に夢を叶えたとしても、すぐに声がダメになってしまって短命に終わる可能性が高いので、先天的にそういうデバフを抱えている場合は………夢を諦めるか、完全に個人のペースでやれるようなシステムを作って上手くやるくらいしか方法が無い。


その手のプロの人達のファンの見方というのは、技量や声質………歌自体のセンスに意識がいきがちになる。


そこが何よりも大切なのは勿論の事ではある。ただ、それだけではなくて………焦点があてらないところの、先天的な問題というのが喉の強さである。


1時間も全力で歌えない歌手なんて、ライブなんて出来るわけが無い。配信者でも少し長めに雑談配信や歌ってみた配信をやった程度で声を枯らしているようでは、使う側としてもコンスタントに物を提供してくれないな………と思われてしまったら、普通に切られてしまうのが現実。


代わりはいくらでもいるのだから、少し質が落ちたとしても、コンスタントに安定したサービスを提供してくれる方に仕事を振るのがビジネス。


個人差っていうのはどの仕事にも付き物だから、その個人差を上手く把握した中でやりたい事を見つけていくのがベスト。

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