𐎢‎𓊆16録𓊇𐎽 世界は広いのか、狭いのか


「まぁ、うちらって社会常識無いもんね」


「思考回路が社不だからVTuberやってるようなもん」


「私は…………私は、そんな事ないって思ってる」


「私と美香は違うよ。ホンモノは楓夏依とゆみりだけだよ」


「どんぐりの背比べっていう言葉を知ってるか?」


「知らないけど。どういう意味?」


「私も知らない」


「完全に同類じゃねぇか」



VTuberは頭のネジが外れていないとやれない。頭のネジが外れていない人間がやってるVTuberの配信とかも見たことあるけど、全然面白くない。


個人勢に多いんだろうけど、伸びていないVTuberっていうのは、始めるのが遅いっていうのもあるけども、それ以上に面白味が無いというか………


トークの内容、全部が置きにいってるようなもので、規制やらBANやらを気にし過ぎて普通の日常会話をしているだけなのだ。


日常会話でも面白く話すのが、私達は常日頃から努力していたことではあったのだが。どんな話題のネタが飛んできてもいいように、日頃から頭の中で「こう来たら、こう返そう」というのをシュミレーションしている。


チャンネル登録者数300万人とかって才能とかって言われるけど、そもそも私はやれば最低限伸びる環境に居させてもらえて、自分が宣伝しなくても会社が面倒見てくれるような……他力しても許されるところがあったのもある。


こんなに恵まれた、やればやっただけ結果が出るような環境で努力しないとかって馬鹿だと思う。


だからこそ、誰よりも努力した。面白い配信を届ける為ならば……!!って、デビューしたばかりの頃から変わらずに、ずっと漫才の動画を何時間を見続けたり、バラエティ番組を見たり、普段からのコミュニケーションでも、どうすれば面白いか?相手が笑ってくれるか?なんていうのを人一倍意識して生きていたつもりだ。


だから、私は…………決して才能じゃない。事務所に入れた運と、そのからは周りの環境があったからこその結果。


私の努力があったからこそなのは否定しすぎるのは良くないと思う反面、確実に私だけの力では絶対に辿り着けなかった………一生掛かっても見ることの出来なかった世界だっていうことは言い切れる。


私が思うに、VTuberに天才なんて居ない。YouTuberには居るけど、VTuberは他人の力が大きくあってこそのものだから。個人勢であっても、ガワを提供してくれる人が居て、3Dモデルを監修してくれる人が居て………私達なんて、表舞台に立って目立たせてもらっているだけにしか過ぎない。



本当の天才は、この可愛いガワを作ってくれたり、私達のキャラというのをある程度明確にした状態で指導して売り出してくれる人達のお陰なのだ。


謙遜や卑屈になっているわけではない。周りに感謝しているだけ。この感謝の気持ちを忘れたら、VTuberとしては終わりだろうと考えている。


どんなに世間と感覚がズレていようとも、周りの環境に誰よりも感謝する気持ちというのは、世間の誰より持っている上に、強いっていうのは自負している。



だからこそ、今は自分の本当の体となった豐穣熾カレンの事は大好きだ。事情を知らない人からすれば自分大好きなナルシストにしか見えないだろうが、最悪それでもいいと思っている。


この、豐穣熾カレンという女の子の存在を少しでも否定はしたくはない。周りの誰かが否定しても、私だけは意地でも「豐穣熾カレンは可愛い!!最高のVTuberだ!!」って声を大にして言い続ける。


そういう気持ちもあって、アンチに対しては複雑な気持ちを抱いていたね。自分自身への悪口は特に何とも思わないタイプだが、豐穣熾カレンについての悪口を言われてると思うと、どうしても「こんな可愛い女の子をいじめるなんて、とんだ人間のクズだな」って思ったりもしてしまう。


なんていうか、配信中は自分自身が喋ってるから悪口は自分に全て飛んできてるんだなって思っているから何とも思わない。


アンチコメを見つけても、後々になって気に病むことは無い。


問題なのはアーカイブを見返した時だ。それと、オリ曲などを上げたり、配信とは別に編集した動画を上げた時、切り抜きなどを見つけた時に、その時のアンチコメは私に対してではなく、豐穣熾カレンに飛んでるもんだと思ってしまって、「なんでそんなことを言うんだよ!!」ってことでイライラすることは多々ある。


この悩み、誰からも共感してくれないからこそ、変に深く思い悩むことになってしまう。内容自体は悩むことでもないはずなのに、共感というものがないだけで、メンタルへのダメージが割増になってしまう。


孤独のダメージの大きさを物語っているな。



「本当に、仲良しだね」


「まぁ、事務所でもウチらは本当に仲良いってことで通ってましたから。他はビジネス仲良しみたいなところありましたし」


「あぁ………そういうのもあるんだね。やっぱり」


「あるんだろうなって思ってて、やっぱりあったなって感じてはいましたけど、同期は仲良いし、プライベートでも学生時代や幼馴染みよりも同期で遊ぶことが多いですね」


「いいなー、私もそういう人が欲しいなー、友達っていうかさ」

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