𐎢𓊆15録𓊇𐎽 戦闘系VTuber
___パシャッ、カシャシャシャシャシャ
「おい、楓夏依。私の顔を連写するな」
「つい」
「つい、じゃないよ」
「でも、めっちゃ可愛く撮れてるよ」
「知ってるよ。どんな状態でも、この顔は可愛いもん」
「…………………あれ?意外とゆみりちゃんってナルシストなの?」
「えっ、あっ····················いや、その、これは…………自分の顔というか、自分の顔ではあるんだけど、自分の顔ではないというか………」
「その見た目にも理由があるってことなのかな?もしかして、他の3人も」
「「「はい」」」
「うーん…………確かに、転生者の中には、前世の時に思い入れが強かった人とかが居たりすると、転生した時に、その人自身に見た目が寄ったり………その想いが強ければ強いほど、ソックリになるっていうのは聞かないこともないけど………」
「私達の今の見た目、前世でVTuberとして活動していた時のモデルなんです」
「あー、なるほどね。結構付き合いが長かったのかな?」
「私達全員同期で5年ほど……です」
「ゆみりに関しては、チャンネル登録者数300万人超え、スパチャ世界一の記録も持っているくらいですから」
「………………もしかして、豐穣熾カレンっていうVTuber?あっ、コレじゃん。服装はアレだとしても、顔は完全に豐穣熾カレンだね」
「はい、そうです」
思わず、私が「自分(カレン)のことを可愛い」と言ってしまい、あらぬ誤解をシエルさんにされてしまうところだったのと、今後の付き合いを考えてみても、いちいち隠して話すのが面倒臭いと判断して、自分達の前世の話と、前世の時に世話になった……VTuberとしてのガワが今の自分の姿になっているということを説明した。
他の3人もVTuberの時の名義を話して、それをシエルさんが一つ一つ調べている。
私達の名前はしっかりと検索結果で出てくるようだ。何故、異世界のスマホに私達の世界の情報が反映されているのかは謎だが。
それについては美香が「私達のことがスマホで出てくるのですか?」と訊ねて、シエルさんが「そうだよ。ゆみりちゃんと"最前線組"が生きてきた日本という場所は一緒だから。その時からの異世界と異世界の繋がりというのは当たり前のように行われている」という回答を得た。
どうやら、私達が住んでいた世界と今居る世界は昔から繋がっていて、それが現行でも恒常となっているとのこと。
その説明と同時に私達の事が反映された検索エンジンの検索結果の画面を見せてもらった時、YouTubeなどの動画サイトの投稿された時期である、〇〇年前という記述を見た。
私達のVTuber時代のアーカイブであるのは間違いない………そのままサイトに、消せらずに残っているのは嬉しいことだった。
しかし、それ以上に〇〇年前という投稿された年月を見て、驚いた。そこに記されていた数字は………2026年前という記述だった。
これを見た私達全員が絶句した。
私の中では、「転生という過程を踏んでいるということは、ある程度の年月は経っている世界で生きていることは間違いない」と考えてはいた。
何千年単位かもしれない………というのも、予想はしていたつもりだった。ただ、極わずかな可能性だろうと踏んでいたのだ。
それを、現実として目の当たりにして言葉を失ってしまった。シエルさんの言う通り、私達が生きていた日本がある世界と繋がっているのが本当だとすれば………いや、この検索エンジンの結果が仮説なんていうものを許さず、ただ事実を並べているのだということを暗に示している。
私達は、この世界にVTuberだった時のガワに転生して、前世の時に生きていた時代から2000年以上の時が経っている状態で生きているということが確定してしまった瞬間だった。
私達が全員何も言えなくなっている中、シエルさんは「個人的には、そこまで驚くような事でもないけど………かなり稀有なケースではある転生だね」と淡々とした表情で話していた。
「だ、大丈夫?」
「は、はい…………なんとか………」
「多分、被っていたと思うよ?例の"最前線組"のアイドル連中とかと」
「そうかも、しれませんね」
「でも、本当に聞いたことがないんだよな………」
「お茶の間でも結構浸透していた個性派ユニット………そのダブルセンターの歌唱力とダンスパフォーマンスが凄いっていうの、聞いた事ない?」
「無い、ですね………」
「でも、ガチガチのVTuberっていうのは意外と世間では広まっているのを知らなかったりするし、このどんなに売れているアイドルグループが居たとしても、知らない人が居ても……マジで?ってはなるけど、それ以上は無いかな?」
そんなに有名なアイドルが、同じ時代に生きていて、裏では異世界でクエストバーサーカーとして………そして、最強と言われた"最前線組"という下部組織で活動していたとは。
私達の今置かれている状況と、どことなく似ていなくもないのかな?
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