𐎢‎𓊆13録𓊇𐎽 Sign









___カリカリカリカリ………









「サインしました」


「私も出来ました」


「……………よしっ」


「守られるだけじゃなくて、守側にもならなくちゃ………!!」


「ありがとう!!皆!!」








____シュゥゥゥゥン………ポウンッ








「あっ、本当に免許証みたいな形に…………」


「これが許可証兼身分証ね。後、依頼の受注については、総督府に寄らなくても内勤……私達のような内勤も兼ねている人の誰かに言ってくれれば、その場で案内出来る依頼とかもあるから。それと、依頼外の仕事でも今回みたいに、誰が討伐したのかっていうのを特定出来る場合は、相応の報酬金も払えるから」


「あっ、そうなんですね」


「うん。あっ、その許可証ってプリペイドカードやキャッシュカードも兼ねているから絶対に無くさないようにね?これ、契約すると同時に口座も開設されるようになっているから。パスワードとかじゃなくて生体認証だから、なりすましなんかは出来ないようになっているけど…………無くしたら困るでしょ?再発行もすぐできるけど、無くさないに越した事は無いから気を付けてね?」


「気をつけます」


「とりあえず、スマホも渡しておくか」


「えっ?スマホまであるんですか?」


「うん。総督府支給でね。後、パケ放題とカケ放題プランは入っているから………まぁ、ゲームの課金とか、クレカとかの支払いとかをしない限りはスマホ料金はゼロだね」


「実質ゼロとかいう詐欺じゃなくて、本当にゼロってことなんですね」



サインが終わった後に、契約書から変化した許可証の説明が終わってすぐにスマホとSDカードとモバイルバッテリー、充電器も支給された。


ここまで優遇しないと誰も入ってきてくれないからということで、早々に辞める可能性がある人でも、とりあえず支給するものは全部支給するというマニュアルがあるらしい。


仮に辞めたとしても、支給品に関しては返却不要という取り決めになっている。ただ、どんな条件であれ、自分の意思で籍を総督府から抜いた人に関しては、再度契約することは特例を除いて原則無しということも教わった。


特例というのは、余程の実力者………圧倒的な戦力を保持している人の再契約などは互いの合意によっては有り得るという。


最後に再契約の事例があったのは、1900年前の転移者のみだったらしい。その転移者は例の"最前線組"の子孫だったのと、とんでもない力を持っていたため、総督府側が頼み込んで再契約を行った。


……というものを最後に、それ以来は再契約が行われたというデータは一切無いという。


そもそも、再契約という事例が今まで3回しか無かったということもあり、大抵の人は殉職するか…………わざわざ籍を抜くということをしないで、そのままにしておくという二者に分かれる。


抜けさせないための策もあり、下手に籍を抜いたほうが損をするという心理状態にさせるのがとても上手いのが総督府という組織でもあるようだ。


ちなみに、どうやら殉職率はここ100年のデータだと90%以上を超えている。辞職率ではなく、率で90%超えている。


100年の間に入ったクエストバーサーカーの人数が36900人、そのうちに3000人だけが殉職だけは免れて天寿を全うしたり、今も尚存命中の人だという……


ただの死亡率ではない、殉職率90%というのが恐ろしい。


更に、直近10年のデータにすると………ほぼ100%に近い殉職率という、契約初日の人間に言うべきではない現実を、シエルさんは突き付けてきた。


100年ほど前から急激に上がった、ただでさえ高い殉職率が………ここ10年で更に上がって、100%に近い数値になるという………


その中には中学生、高校生…………中には小学生も居るという。加入に下限も上限も設けていないクエストバーサーカーだが、流石に子供の死亡率が高くなり過ぎるため、下限は設定した方がいいのでは?と言われてるほどまでに、殉職率が異様に高まっているのが今のクエストバーサーカーという仕事。


2000年前………"最前線組"が台頭していた時代は未成年の殉職率は10%を切っていたという。


今は95%前後に跳ね上がっているのだから………そこまでにならば、何も対策をねらない訳にはいかないだろう。だが、これでも年代別で見ると、殉職率は比較的に低い方に当たるようだ。


1番殉職率高いのは20歳〜30歳の間…………ここ5年を限定したデータでは、シエルさんからスマホから飛び出してきた立体映像の統計グラフを見せてもらい、その年代別のそこの世代だけ、100%という数値ボーダーラインにグラフの先端が当たっている。


どこの世代も90%前後の殉職率ではあるが………まさか、自分達の世代の殉職率、ほぼどころか、100%だなんて。


いや……0.01%の確率とかならば存在しているのだろう。30000万人居て、3人くらいは何とか生きているのでは?っていうくらいの望みはあって欲しい。


シエルさんの年齢も19歳なので、私達の世代の死亡率からは外れている。シエルさん曰く、5人くらいは生きているとの話。


うち1人は病院で植物状態とのこと。



…………………………今までの話を全てまとめると、私が言えるのは1つだ。


とんでもない、世界に迷い込んでしまったと、思わざるを得ない事態になった。

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