𐎢‎𓊆11録𓊇𐎽 ふーん、エッチじゃん ※場所の話








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私達はシャワーを浴びて、店員さんが用意してくれた部屋着に着替えた。


店のロゴが入ったジャージ上下を借りることになった。自前の服は洗濯をしてくれる事になった。


ここまでしたくれて、料金も無料。一切金も取らないということを言ってくれた。


着替えた後は、店員さんに来てくれと言われたリラクゼーションルームに向かい、そこのソファで座って待っている店員さんの向かい側のソファに4人並んで座った。


テーブルには高そうな茶菓子と紅茶までも用意されていた。



「あっ、シャワーありがとうございます」


「いえいえ」


「すみません、自分達……お金を持っていないものでして………」


「知ってますよ。ですもんね。ここまで見れば分かる程の転生者も珍しいものですし………あの体液を浴びていたということは、外に転がっている化け物の死体を作り上げたのも………そちらの、青紫色の髪の方ですよね?」


「あっ、分かりますか?」


「返り血を浴びていたのが2人……もう1人の方は明らかに怯えていました。となると、消去法で貴方かと」


「なかなか、洞察力が鋭い方で…………」


「あんな化け物が常日頃からやってくるような世界で生きてて、今までも貴方達と一緒に、他の世界から転生やら転移をしてきた人達が何人も殺されていますから。でも、明らかに転生してから初日だろうという状態であるはずなのに、あの化け物を無傷で………しかも、1人で殺すなんて…………この世界で生まれ育った実力のあるですらもビックリの事案ですよ〜」


「は、はぁ…………」



店員さん、凄い喋る人だな。


女の人で、とても朗らかな感じの人。


見た目と口調はとても女性らしいのに、中身は楓夏依みたいな男勝りな感じが滲み出ている。


タバコを吸いながらケラケラと笑って話してくれて、とても安心して自分達の事を話せる。

何よりも、こちらが多く話さなくとも事情を粗方分かってくれているという察しの良い人でもあった。


楓夏依もタバコを貰いながらも、いつものように陽キャオーラ全開でいくのではなく、大人しく静かにタバコを燻らせている。



話の内容をまとめますと…………さっきの化け物の名前は魔獣、魔龍なとと呼ばれる物。人を喰らって、それを糧として生きている種族の生物。


それを殺すために生まれたのがクエストバーサーカーという仕事につく人達である。


店員さん……名前はシエルさん。シエルさんもクエストバーサーカーとして活動している。


クエストバーサーカーというのは、この街にある"総督府そうとくふ"と呼ばれる機関にて、クエストバーサーカーとしての活動を認められた人のみが許可証を受け取り、その許可証が交付されたタイミングから、クエストバーサーカーとして、様々なクエストが受けられるという。


さっきの私のように、魔獣や魔龍……といった化け物の討伐をこなすものもあれば、交通誘導や探偵の業務などの依頼もある。


道路工事の現場の誘導員としても、クエストバーサーカーは派遣されるようだ。


ちなみに、私が先程殺した化け物は"特等危険種"と呼ばれる魔龍の中でも最も危険視される種族だったらしい。


高難易度の依頼として、ある程度の実力者がある人間達では無いと依頼すらも受注できないという危険な相手だったという………


知能も戦闘能力も高く、出会ったら最強と言われたクエストバーサーカーですらも平気で命を落とすような………正真正銘の化け物だったという。


そんな化け物と対峙して、生き残った転生者初日の私達。クエストバーサーカーとしては興味を惹かないわけがないということで、話を色々と聞きたいとの事だった。



「………で、一気に話したけど理解出来た?」


「「「「はい」」」」


「んー、やっぱり……今まで私が会ってきた転生者や転移者達とは本当に違うんだよなぁ〜?頭の回転も戦闘力も桁違いな感じが………」


「そう、なんですかね?」


「あっ、そうそう。いきなりなんだけどさ……クエストバーサーカー、やってみない?」


「「「「えっ?」」」」



いきなりの、勧誘…………?


でも、そんな簡単に出来るものとは思えず、ある程度の試験なども必要なのでは?っていうことを訊ねたら、私達が今居るリラクゼーションルームの奥にあるスタッフルームの扉の向こうに入って、数分後に書類を4枚ほど持ってきて戻ってきた。


目の前のテーブルに1枚ずつ、私達それぞれの目の前に置いた。


文字は読めないが……なにかの契約書であることは間違いないなさそうだ。



「これ、契約書。サインしてよ」


「えっ?なんであるんですか?」


「私、これでも総督府の内勤の……幹部とかも兼ねているんだよ。何足のわらじ履いてんだよ!!ってよく言われるよ。ここのホテルは、報酬金やら内勤の固定給で有り余ったのを使って、趣味半分でやっているだけよ。人って下半身が関わった時に変に本性を出すから。後、どんなカップルが入ってるのか……とかね?ちょっと贅沢な人間観察みたいなノリでやってる」



そういえば、気付いたらシエルさんはタメ口で私達と話している。年齢を聞いたら今年で19歳の18歳と話していた。


満18歳とは思えないくらいに大人びている。年齢を知ってなお、自分達の年齢も明かしづらくなったので、私達は敬語で話し続けている。



それに、19歳の女の子が内勤の上役になれてしまうほどの組織形態が気になる。完全出来高制………実力至上主義の組織形態ということになっているとしか考えられない。


詳しい説明を聞かずとも、シエルさんの仕事内容や貫禄などを見ていると、総督府……クエストバーサーカーという環境が、いかに弱肉強食なのかっていうのが伝わってくる。


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