𐎢𓊆8録𓊇𐎽 枝道
………しまった、同期への愛を語りすぎてしまった。
私、本当に同期の事が大好きだから。2期生の事を1番大事にしているのは、私だと思っているし、私の同期への仲間意識の強さっていうのは誰にも負けないって自負している。
隙あらば自分語りじゃなくて、隙あらば友達語りしちゃうのところがあるかも。
自分語り………ね。
私自身はそこまで突出した何か特別な個性っていうのは無い。
普通の家、普通の両親、普通の小中高に大学という学生時代………歌うことが大好きなだけの、元陸部の長距離選手……特に結果を残していた訳じゃない、普通のヲタ女。
それだけの私。
今でも、なんでこんな個性的なメンバーの2期生と肩を並べて活動していたんだろうって思ってしまう。
それがコンプレックスというわけではないが、社長は私の何を見て採用してくれたのだろうと未だに疑問があった。
もう、その真意は知ることは出来ないのが………物凄く残念である。終わる前に、社長の真意っていうのを聞いておけばって思ったのが、VTuberとして………豐穣熾カレンとして活動してきた中で、自分が原因で後悔したっていう唯一の心残りかな。
倒産に関してはどうすることも出来ないから。ただひたすら絶望するしか無かった。こればかりはイレギュラー中のイレギュラーということもあり、後悔やら何やらで片付けられることでは無いので、また別のカテゴリーに属されるエピソードではある。
___ミシッ………
「ん?」
「どうしたの?ゆみり」
「なんか…………ミシッって音が聞こえてきたような…………」
「どこから?」
「あの、その………さっきの年の差凸凹カップルが歩いていった方向の………」
「あー、円光カップル」
「おいこら、普通に言うな。オブラートに包んだのに」
私がせっかくオブラートに包んだっていうのに。それをことごとく食い破るようなことを言うのが楓夏依という女だ。
仕事人としては、自分よりも年下でありながらも尊敬している部分は沢山あって、見習っていきたいところしかないのだが………プライベートになった瞬間に、いきなりクソガキになるのが玉に瑕。
というか、私以外の3人は全員がクソガキになる。ガワを纏えば一気にオーラと華が出てくるのに対して、配信が終わった瞬間に一気にクソガキが顔を出す。
私は良くも悪くも裏表が無い性格でもあるため、配信中でもプライベートでもテンションや喋り方というのも殆ど変わらないでいる。
この、私以外の3人のテンションの差というのも売れるきっかけになったのかな?っていうのも考えている。
プライベートな部分っていうのは完全には隠しきれずに多少なりとも出てくるもの。それがリスナーにも伝わってる部分があるのでは?って勝手に考えている。
「待って………まだ、音がする」
___ミシミシミシ………ミチチチチチ…………!!
「…………なんか、この音………嫌な気配がする………」
「なんなんだろ………?」
私達は音のする方へゆっくりと歩み寄る。
最初は木造の建物が軋む音なのかと思ったが、周辺にそのようなものはない。鉄筋コンクリートの建物が建ち並ぶ街並みの中で、そんな古い建造物が風で煽られて鳴る音が聞こえるわけもない。
それに、その軋んだ音は…………途中から、何かを引きちぎるような……生々しい音に変わった。
肉を乱雑に喰いちぎるような、そんな音が。
「ヤバく、ない?」
「………………大、丈夫だと思う」
「いや、大丈夫じゃ、ない気がする………」
大丈夫だと言った美香自身、体が震えていた。何か、ヤバいものを察して恐怖で震えているようだ。
私達の中では直感が冴える方ではある。それも、良いことでも悪いことでも的中率がほぼ100%という、もはや超能力者なのでは?って思えてくるくらいの感性を持っている。
第六感ってヤツなんだろう。シックス・センスとも呼ばれるものを美香は持っているのではと思う。
美香がこれ程まで恐怖しているということは、確実にろくな事にはならない。ここまで顔が真っ青になっている美香は初めて見た。
「美香、大丈夫?」
「ありがとう………美咲、私は……まぁ、大丈夫じゃないけど…………でも、本当に気を付けた方がいい」
「おいおい、これ以上は行かない方がいいんじゃ___」
___ミチチチチチ…………!!!!ブチチチチチチ……………!!!!
「「「「…………………………!!!!????」」」」
[̲̅ᛗ̲̅][̲̅ᛗ̲̅]༆l̺͆l̺͆❂[[̲̅[̲̅ᛟ̲̅][̲̅ᛟ̲̅]あぁぁぁぁぁあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙……喰い足りねぇな。クソ不味い、腐った脂身の塊みてぇなオッサンと、若いだけで筋張ってて美味くも何ともない女の肉だけじゃ……俺の空腹は満たされ···············ん?[̲̅ᛣ̲̅][̲̅ᛣ̲̅]]☪︎l̺͆l̺͆༆[̲̅ᛗ̲̅][̲̅ᛗ̲̅]
(あっ、ヤバい………!!)
まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずい……………!!!!
何だ、あの化け物は……!?なんて考えている場合じゃない。
逃げないと、確実に…………殺される…………!!!!
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