𐎢‎𓊆7録𓊇𐎽 異世界転生

「うへぇ〜、本物のエルフじゃーん」


「耳尖ってないかもとかっていうのがエルフだっていうのを聞いた事あるけど、ちゃんと耳が尖ってるじゃん」


「まぁ、フィクションに出てくるモノも何かしらのノンフィクションを元にしているってことも多いもん。火のないところに煙は立たないとかって似たようなもんだよ、きっと」


「なんか違う気がするけど、ゆみりが言うならば………そういうことにしておくか」



私が言うならば………って言い方をされると、何かあった時に私のせいになる可能性を孕んでいますよね?


上手く責任転嫁するための保険としての発言だと、私はそう捉えるよ。楓夏依はそうやって上手く世渡りしようとするから。さり気なく他人を落とすような言動をすることが多々ある。


それで事故らされることが度々あったもんだから。さり気ない責任転嫁をしてくるのは何度も止めて欲しいと言っても、本人は「はて?」と言った感じですっとぼけてるため、私から何も言うことは無いと呆れている。


何も話が通じないなら、放置するしかない。こっちが早々に折れておいた方が都合がいいこともあるものだ。



通りの歩道まで歩いていき、街の詳細がどうなっているのかも見ておく。電車の音が頻繁に大きく聞こえるなと思ったら、すぐ近くに駅への続く地下通路のようなものがあった。


何駅なのかは全然分からないし、エスカレーターの入口の上のところに書かれている案内板の文字なんて一文字も読めていないが、電車のアイコンと、その〇〇線というのを表すような文字があったので、確実に駅構内へ続くエスカレーターだなっていうのは分かる。


駅構内まで降りようとは思ったが、駅に向かっても特に何も無いだろうと思ったので、一旦は通りを歩いて、何が周辺にあるのかを詳しく見ることを優先とした。


車道には普通車、大型トラック、バスなど………交通機関などについては、東京と大差は無い。


それを利用する人物達の容姿が、ファンタジーじみているっていうだけかな。



少しずつ進んで、枝道の方にも視線を向ける。人気の少ない枝道の奥の方にはラブホテルのような建物やら………いわゆる大人の店らしき、というものが並んでいる。


ホテルの出入口からカップル………カップルというには、明らかに年齢差がありすぎる様な男女が出てきた。


中学生くらいのエルフのような茶髪のツインテールの女の子が、私よりも少し上の男の腕に抱き着いて、私達がいる方向の反対方向へと歩いていった。



「パパ活やん!?」


「しっー、声がデカイんだよ………!!楓夏依………!!」



楓夏依が急にテンションが上がって、パパ活というワードを繰り出した。本人達にも聞こえるかもしれないという声量で、思ったことをストレートに口に出してしまったので、3人で楓夏依のことを黙らせるために、口を抑えたり羽交い締めにしたりした。


素直に何でもかんでも口にすればいいってものでもない。ああいうのは触れないでおくっていうのが定説だ。



………しかし、まるで新宿だな。


新宿……東新宿の方と言えばいいのだろうか。新大久保の新宿寄りの………西武新宿の方って言えばいいのかね?


大久保公園とかある方に。


大久保公園って本当に立ちんぼ多いよ?楓夏依と2人で新宿で飲みに行った時に、帰り際に大久保公園の前を通ったらさ、凄い立ちんぼが並んでいたんだよ。


地雷系の格好をした、トー横キッズみたいな………本当に首を突っ込んでいけないような、不審者の極みみたいな女の子が並んでいた。


楓夏依がその女達を見ては「全てから逃げた人間の末路」とかって言ってたな。楓夏依は施設っ子だったからね。


母親が不倫、父親は新しく出来た女と暮らすために楓夏依を施設に放り込んだ。たまたま入った施設の環境が良くて、グレたりすることは無かった。


本人は「グレてる暇があるなら、生きていく力をさっさと付けるに限る」っていう強い人間の思考を元から持っているタイプでもあり、そのメンタルを買われてクリスタリゼーションの2期生になったのかも。


圧倒的なオーラはあったから。同じオーディションでね。今でこそ、華もあるが、出会った当初は華というものは一切無い………ほぼDQNのような状態だった。


なんで、書類審査が通ったのかが不明だし、こんなDQNみたいのがヲタクコンテンツのVTuberのオーディションを受けるなんて……って思ったけど。


楓夏依は特別ヲタクっていうわけではないが、YouTubeでは高校の時………施設にいた時代から、VTuberの配信を見ていて元気を貰っていたっていう過去もある。


推しを見つけて、当時のバイト代から出した120円のスパチャで自分のアカウントの名前を呼んで「スパチャ、ありがとう♪」って言ってくれた事から、いずれは自分も配信者となりたいっていう夢を抱いたっていう。


自分が与えてもらったものを、今度は誰かに与える番だっていう………カッコいい理由を持って活動してきた、配信者の鑑みたいな奴。


配信でも話していたくらいのエピソード。


基本的に100円単位の低額スパチャはスルーされがちだけど、楓夏依は逆に100円単位でもしっかりと、スパチャ読みの時間ではない………本編中でも、しっかりと触れていく。


それで赤スパスルーされたリスナーが「スルーされた( ߹ㅁ߹)」というコメントを赤スパで送った時に、「私が高校の時に、推しに120円のスパチャでありがとうって言ってくれたのが嬉しかったから、高額スパチャも低額スパチャも平等に扱う」という名言を残した。


こんなことを言える配信者になりたいなって思ったよ。これを言った瞬間、チャンネル登録者数が若干減ったということも起きた。


ヲタクからすれば、配信者の過去の理由とかどうでもよくて、自分が金を使ってスパチャ送ってんだから、そっちを優先しろ!!っていうのは………それはそれで当然の意見だよねっていうのは思う。


楓夏依もそれについても、オフの時に「私の信念についてこれないなら、全然降りてくれても構わない。賛否両論あるもんだと思っているから、アンチだって厭わない」っていうことをシラフでしっかりと語ってる。


楓夏依がちゃんと男だったら、間違いなく頑張って彼女にしてもらおうと躍起になってくらいに惚れたよね。


同性でストレートでも、心のどこかに1%以下の同性愛の気持ちに火を付けるようなものをその時は感じたよ。

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