𐎢𓊆6録𓊇𐎽 株式会社CRY.STi⟬A⟭LLIZATION 2期生
「…………………………………」
「…………………………………」
「…………………………………」
「…………………………………」
「…………………なんか、何とも複雑だね。気分的に」
「ほんそれ、あんな死に方をしたはずで、色々と思うところがあったのに………色々と同時に起こりすぎて、逆に普通の日常な感じがしてきたわ」
「うん、事務所無くなる前の前日までのテンションだよ」
楓夏依の言う通り、不思議な事が一気に押し寄せてきたせいで、1周回って冷静になってしまっている。
人間って不思議なもんだ。
色々な不可思議な現象が重なると、あるタイミングから一気に冷静になるのだ。人間の仕様………本能ということにしておこう。
ある種の防衛本能的なものということで勝手に確定するか。
2期生カルテットが揃ったところで、お互いの安否や生存確認……1回死んでるので、生存確認という言い方もおかしいかもしれない。
まずは、この世界が何なのかを知る必要がある。いつまでもホテルの中に引きこもりっきりというわけにもいかない。
現状維持では何も解決しない。
何かしなければ、今日食べる物にも困るかもしれないという状況でもある。そう考えると、あまり時間は無いな。
4人で話し合って、一旦はホテルの外に出るだけ出てみようということで意見がまとまり、エレベーターまで向かって1階まで下る……前に、念の為にそれぞれの自室の鍵を持っていくことにした。
幸いにも、中に鍵を忘れてもオートロックではないので、扉を閉め切っても中に入って鍵を取りに行くことが出来た。
全員の鍵の回収が済んだことを確認してから、再びエレベーターへと向かう。エレベーターに乗り込み、1階までのボタンを押す。
今、自分達が居るフロアは30階だった。
通りでベランダから地面までの距離が異様にあるなと思ったわけだよ…………もう、あの光景を1分見せられただけで心室細動を起こす自信がある。
恐怖心と突発的なストレスからくる不整脈で死ねる自信がある。
___ウゥゥゥゥゥンッ……ピンポーンッ
「1階に着いたね」
「う、うん………誰か、居る?」
「あっ、受付のところにホテルマンの人が居るよ?」
「普通に………人間の姿か」
「ここ、東京に似ているけどさ……明らかに異世界だよな。窓の外から外の景色を見た感じ、絶対に日本じゃないって事は確かだよ」
「うん………まずは、外出の許可とか………そこら辺どうなってるのかを聞いてみよう」
私達はフロントに居るホテルマンのところで歩いて、外出についての規則などをサラッと簡潔に聞いた。
別に、わざわざ許可などを取る必要も無かったようだ。鍵さえ持っていれば特に何も……という状態のようで。
料金も前払いで済まされてるとのこと。
前払いで済まされている、ということは……私達を、このホテルに泊めてくれた人が居るっていうことが確定した。
それについても聞いてみたが、「それはお答え出来ません」と渋られてしまった。プライバシーと関係とかで断ったのではなく、何かしらの私情のような事情があるのかもしれないって何となく思った。
教えてくれないと言われたら、ますます知りたくなってしまうのが人の性というもの。しかし、あまりにもしつこく粘着したところでホテルマンにストレスを与えるような真似はするべきではない。
一度聞いて駄目ならば素直に引く。それが最善だ。おそらく、知りたくなかったとしても………嫌でも知る時が訪れる事になりそうな気がしなくもないから。
ホテルマンに聞かずとも、1歩外に出るだけでも、自分たちの現状におけるヒントというものは簡単に見つかるかもしれない。
外に出なくとも、異世界であることは確信できたくらいだ。他にも色々と何かが見つかることだろう。
ホテルから出た私達4人。
辺りを見渡して何があるのかを確認する。
高いビルが立ち並び、都内の大通りを思わせるような………綺麗に舗装された車道に歩道。そこを行き交う多くの車両と人間達。
ビルにはコンビニも併設されているところが見受けられた。
……………うん。本当に、ほとんど東京と言ってもいいくらいの街並みだ。電車の音が聞こえるということは、近くに駅もあるということになる。
ほぼ東京と思われる場所でも、東京では無いと言いきれてしまう違うところがある。
歩いている人間の中に、人間とは違う人種というか………種族が混じっている。ファンタジーのアニメでよく見るエルフのような見た目をした人達だ。
他にも、オークやオーガ、ゴブリンのような見た目をした人達もいる。いわゆる、3等身くらいのチンチクリンのような体躯ではなくて、普通の人間と同じ、7等身や8頭身といった身体のバランスの、肌の色や角が生えているなどの違いがあれども、ほぼ人間と変わりのない容姿をしている。
そんなオーク達が、普通に人間と同じスーツを身にまとって通りを歩き回り、スマホで何やら話している様子の人も見掛ける。
東京………前の世界では絶対に見かけるのはずない種族が居るお陰で異世界転生をしてしまった事は何の言い訳もできることも無く、一切の憶測もない純粋な真実となった。
それでも、あまりにも既視感しかない街の光景が、「やっぱり東京なんじゃないのか?」という気持ちが僅かながらに残ってしまっている自分がいる。
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