𐎢‎𓊆5録𓊇𐎽 竜宮城マリナ CV:田中美咲

「へぇー、2人も蘇ってんだね」


「蘇った、っていうことでいいのかな?」


「そういうことにしましょうや、ね?御三方」


「「「……………………!!!???」」」


「誰だ!!テメェ!?」


「酷っ!?私だよ!!美咲だよ!!」


「いや、急に出てこないでよ………ビックリするからさ………」



美香の後ろから背後霊のように出てきて喋り出したのは、同期デビューの竜宮城マリナの田中美咲みさき


一応は私達と同じオーディションを受けてはいるが、私達3人と違って美咲だけは元から配信者………歌い手としてニコニコとYouTubeで圧倒的な影響力を持っていたため、形式上のオーディションであり、社長からの直々のスカウトにより入所した人物。



NEWSの手越祐也さんに憧れて、歌い手として活動………手越祐也さんと同じように抑揚のある、高音ビブラートを持ち味とし、殆どミックスしていない生歌の状態を動画として上げて、圧倒的な歌唱力にてファンを得てきた実績がある。


"みさきち"というチャンネル登録者120万人の人気の歌い手兼、竜宮城マリナというチャンネル登録者98万人のVTuberという二足のわらじの、ネットのスターである。


完全個人でやっている方が伸びているという事もあり、社長が目を付けるのも納得だった。


本人も配信では「歌い手のみさきち」というのは公表しており、竜宮城マリナとしてのオリ曲も「みさきち」としての歌い方を完全に意識したものとなっている。


元々歌い手時代から顔出しをしていないため、VTuberデビューしても隠す理由は無かったから公表したというもの。


オリ曲を出せば、必ず1000万再生は突破するという圧巻の歌唱力………みさきちとしても、竜宮城マリナとしても圧倒的な再生回数を安定して出せるほどの実力がある。


4人でオリ曲を歌った時は、私と美咲がツインのメインボーカルとして歌ってて、レコーディングの時も、テレビ出演で生歌披露の時も、横で圧倒的な歌唱力を披露するもんだから、もはや引くレベルであった。


手越祐也さんを意識したという、超高音の地声の、フェイクのロングトーン……


そこに綺麗なビブラートもあって、ファンの間でも「VTuber界の手越祐也」と言われるほどまでになった。


本家のファンからも絶賛されるほどなのだから、女性歌手全体で見ても上位の実力があるのだろう。


そんなのと並んでメインボーカルやらされる私よ。緊張で胃液が逆流するかと思ったくらいだ。


もちろん、比較対象されたものでして。


美咲というか、マリナのファンからは「クソヘタ」っていうアンチコメのガトリング砲を一斉砲火されました。


別に、アンチコメとか誹謗中傷とか気にしないタイプなので、「ですよねぇ〜」ってくらいにしか思ってない。


むしろ、アンチコメ無い方がビックリなくらいの状況で歌わされていたようなもの。初めての4人の曲を発表したその後も、基本的に4人で歌う時は私と美咲がメインボーカルということで固定された。



いやー、こればっかりは地獄だったなって思いますよ。でも、見劣りしないためにボイトレを誰よりもやっていた自信があるくらいに特訓を積んだため、だいぶマシにはなってきていた。


最期に出した事務所廃業の1ヶ月前の4人でのデジタルシングルは私の方が上手いって言われるくらいまでになった。


嬉しかったなー。努力は実るもんだなって。心の底から思えた瞬間だった。VTuberと努力を続けて幸せだったって思えてた。


その、ラストシングルの名前………奇しくも【Eternal life is beautiful】っていう曲名だった。


"永遠の命は美しい"という……VTuberは中の人が年齢を重ねても、中の人が声が出続ける限りは半永久的な命が与えられるという意味合いを込めての楽曲。


動画をアップロードして、事務所が無くなるその日までに2000万回も再生された曲………事務所が無くなっても、無断転載されたことによって、そっちで1000万回以上も再生されるほどの曲になった。


元の世界では、私達の曲はファンを通じて永遠に語り継がれる曲になったんだろうなって思う。


最期のデジタルシングルの曲名に「永遠」という文字が入るだなんて…………神様からのイタズラなのかと思うくらいに皮肉が利いているなと思えるくらい、今の精神状態には余裕があることに気付けた。



こんな個性的な面々が集まった、同期4人……株式会社"クリスタリゼーション"2期生。


こうして、ガワを本体として再び2度目の生を受けて、同じ場所で再会するというのも、神様のイタズラだったりするのだろうか。

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