𐎢𓊆3録𓊇𐎽 月島ユキ CV:佐藤楓夏依
「ゆ、···············は・・・・・・?」
私の姿を見た瞬間に、泣き顔から呆然とした表情に瞬時に切り替わる楓夏依。
呆然とする理由は分かる。私も楓夏依って呼んでいいのか、ユキって呼べばいいのか………どっちにすればいいんだろうね?っていう疑問が頭の片隅に有り続けている。
向こうも、カレンの見た目をしている私を観て、脳味噌がバグを引き起こしている模様。
何故、こんなことになってしまっているんだ?
死んだはずの私と楓夏依が、お互いのガワが自分の体となって、その状態となって再開することになるなんて………何から何まで想像出来るわけが無い。
こんな現実が起きるわけが無い………夢でも見ているのでは?って疑ってしまうほどだ。
しかし、ここまでリアル過ぎると夢では無いことを思い知らされる。これは紛れもなく現実………受け入れなければいけないリアルであるのだ。
「えっ、えっ?なんで………カレン?はぁ?」
「カレンなんだけど………普通に、私だよ?」
「新手のオレオレ詐欺か?」
「いや、オレオレ詐欺にしては癖強すぎるって」
そもそも、オレオレ詐欺になってないし。カレンの姿をしていようとも、声が私自身のものであること自体は変わらないのだから。
何も騙せていないよ。
癖強いという以前に、詐欺として何も成立していないんだな。これが。
「まじで、ゆみりなの?」
「うん、残念ながら………残念ながらっていうのもおかしいけど」
「元よりも可愛くなってんだから良くね?芋臭いヲタ女のアラサーみたいな感じから、キラキラピチピチ容姿端麗美少女になってんだし」
「芋臭いヲタ女のアラサーみたい、じゃなくて。それが本当の私なんだよ」
「中の人腐女子だもんな」
「うっさい!!」
「最強のカップリングは?」
「ケンシロウ×ラオウ」
「もう、マニアックじゃねぇか」
「ラオウ総受けが至上」
「知らねぇよ、マジで。お前のせいで北斗の拳のパチンコ、スロット打ちづらくなったんだよ」
それは知らないんだが。
それについては、勝手に好きにしてくださいって思いしかない。私、関係無くないか?
私がラオウ総受けの同人誌とか読んだり……時たま描いたり、夢小説を書いたりなんていう事情は、楓夏依のパチンカス事情には関係無い。
「てか、楓夏依もホテルに居たの?ここの」
「おう、起きてからタバコ吸おうとして、タバコ無いから外出ようとして、玄関とこの鏡見たらユキになってたから………それでパニックって、手当り次第に部屋をノックしまくっていたら、偶然ゆみりの部屋に行き着いたってわけよ」
私に至るまでの経緯も、楓夏依らしさが一切ブレていないようで、ある意味………ちょっとした謎の安心感を覚えた。
死んだ時には私と同じようにUSBメモリしか持ってきてなかったら、勿論タバコなんてある訳もなくて。
そもそも、財布も電子マネーもPASMOもSuicaもないのにタバコをどうやって買おうとしたんだろうという疑問があったが。
一日に1箱吸う割とヘビースモーカーだから、少しでもニコチンが切れるとニコチンお化けになるんだが………今はパニックとかが勝ってて、ニコチン切れの影響出ていない模様。
もう、このまま禁煙すればいいのでは?
非喫煙者の私からすると本当に臭いんだよ。タバコという代物は。
それに、タバコ吸ってる演者は楓夏依だけというのもあって、演者全員から事ある毎に臭い臭い言われても止めないメンタルの強さよ。
流石にVTuber止めるか、タバコ止めるかって言われたら、即答でタバコって答えてくれた。
その時は少し、ジーンっと胸を打たれるものがあった。
しかし、その後に配信で普通にタバコ吸いながら、リスナーの「銘柄、何?」に対して「セッター」って淡々と答えて台無しだったのは記憶に新しい。
セブンスターVTuberの楓夏依、私を見つけるためにドアノックの千本ノックか。様子的に、私が初めての人って感じかな?ノックして人が出てきたって言うのは。人の気配がある部屋にノック出来たって言うのは。
反応が無かっただけで、実は人が居たかも……って考えると、迷惑行為の何物でもない。
「私以外に人とか見掛けた?通路とかで?」
「まだ、このフロアしか見てないからな………ゆみりが居るんだったら、他のメンバーも居るかもしれないね」
「ちょっと探してみるか」
「………………その前に、タバコ買ってきていい?」
「金無いでしょ?」
「無い」
「私も無いからね?」
「ニコチン切れて、キレそう。なーんつって✨」
「………………………………(👁_👁)」
「ごめんなさい、はい」
なんか、違和感しか無いな………
見た目がユキなのに、ユキと話している感じがないというか………配信の時の気分とオフの時の気分が入り交じってて、私の心も複雑怪奇になってる。
早いとこ慣れないと情緒不安定になるな、これは。
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