𐎢𓊆2録𓊇𐎽 大好きなだった、あの日の姿
理解が追いつかなかった。
追いつくわけもなかった。
憧れの容姿でもあったカレンの姿に、自分が大好きな相棒の姿に…………自分自身がなってしまっていること。
声自体は自分の声なので、今までは気付くことは無かった。
確かに、考えてみれば………やたらと髪が短くなっているような感覚はあった。でも、自分が生きているという現実に掻き消されて、そこについては気にしている余裕は無かった。
「…………………可愛いな❤」
唖然としながらも、自分の姿となったカレンの姿を見て、素直に可愛いと思ってしまった。
ナルシストのように思われるかもしれないが、自分の仮の姿であった豐穣熾カレンという女の子が………憧れの女の子が、自分の姿となって、目の前に居るのは客観的に、日常的に見てきたカレンの姿なんだ。
見る度に可愛いと思いながら配信をしていたくらいだ。イラストレーターさんと会う度に毎度のようにお礼を言っていたほどでもある。
そこまで可愛いと思っていたんだ。
自分の姿になってしまった今でも可愛いって思うのは至極当然だと思う。
(でも、なんで…………私、カレンの姿になってんだろ?)
____ドンドンドンドン…………!!!!
「うおっ…………!?な、なに…………!?」
『誰か居ませんかァァァァ!?今声しましたよね!?居ますよね!?』
「ん・・・・・・・?」
部屋の外から叩かれるドアの音に混ざって、慌てた女の声が聞こえてくる。
こ、この声…………聞き覚えしか無いんだが。
(もしかして………!!楓夏依………!?)
佐藤楓夏依。
年齢は学年で言うと5個下だけど、年齢的には私が早生まれなので、4個下っていうことになる。
私の1つ学年が上の先輩という設定の月島ユキというキャラをやっている。
ボーイッシュの体育会系の女の子。
ゴリゴリの姉御肌っ設定。
というか、楓夏依本人の性格に寄せたというのが大きいかも。
ボーイッシュ系だけで売り出そうとしたけど、本人があまりにも男気溢れる乙女だったため、そういう方向性に売り出そうということになった………キャラが中の人に合わせるという稀有なケースのVTuberだった。
本人が男家系で育ったってことも大きいのだろう。
五兄弟の一番上で、下は全員弟であり、親戚の集まりでも母親と祖母、親族の配偶者以外は全員男という環境下で育ってきたため、女らしさというのは皆無だ。
一応、恋愛対象は男ではあるらしいが女もイケるという………まぁ、そういう女だ。
地声もハスキーで低いため、子供の頃から男と間違われることも多い。大人になった今でも、服装もメンズオンリーで、顔立ちも中性的なイケメン男子のようなビジュアルのため、女に逆ナンされることもあるという。
メンズと言っても、平成のギャル男………まさに、KAT-TUNの赤西仁のような風貌でよく現れる。
そんな陽キャみたいな格好しているが、本人は人見知りの根暗だったりする。案外。
そのギャップが配信中でも出るため、それが女の子らしい部分としてV豚達をブヒブヒ言わせる要因となっている。
ちなみに、オフの時では「下の名前がVTuberよりもVTuberらしいキラキラネーム」って自他共にネタにしている。
酒飲みながら、酔っ払った勢いで「月島楓夏依にしてやろうか!!」って1期生の先輩に絡んでキレられたっていうエピソードも添えておきます。
そんなヤツでも、自分の大切な仕事を失った時は涙を流して………根性でどうにかなる!!生きてりゃ何とかなる!!って常日頃から、雨の中でもグラサン掛けているようなアホでも、自殺を決意してしまうんだなって。
でも、まさか………こんなところで普通に再開するとは思わなかった。
でも、こんな見た目じゃ……色々と恥ずかしいな。
いや、でも、ワンチャン………楓夏依自身もユキの姿になっているのかな?
声だけじゃどうにも見た目の判断が出来ない。
(と、とりあえず…………迎え入れるしか、ないよね?)
ユキの姿をした、楓夏依か………
楓夏依自身の姿は、髪も昔の赤西仁を意識したような……いかにも、平成のギャル男という見た目。
スーツなんて来た日にはホストにしか見えないくらいの容姿。身長も170手前くらいまである高身長の筋肉質なのもあって………
ユキだと、そんなにゴリゴリマッチョキャラでは無いけども……体型そのもの自体は、私もカレンに寄っていると言うよりは、中村ゆみり自身に寄っているところがある。
おそらく、画面越しで見てきたユキよりもマッチョなユキが出てくるのだろう。
プロフィールでのユキの身長は157cmなんだよな………プラス10cmの高身長マッチョのユキとか、威圧感半端ないな。
想像しただけで分かる威圧感。
私のリアル身長、ユキよりも少し大きい160ピッタリくらいだし……
いや、本当に怖いな。
_____ドンドンドンドン!!!!
『ゆみり!?ゆみりなのか!?』
「あぁ、うん……そう___」
『開けてぇぇぇゑゑゑゑゑゑゑゑ!!!!!』
___ガチャッ、キィィィィィ……
「…………や、やぁ」
ドアの向こうには、想像通り。
一回り大きくなっているユキの姿があった。やたらとヌルヌル動いているユキが、リアルな泣き顔をしている。
ガワとしてじゃなくて、完全に自分の体になってしまっているから、表情の作りや細かい仕草が完全に人間のモノとなっている。
カクカクしていて、動きに滑らかさが足りてないのがVTuberなのに、それが無くなりすぎると逆に違和感でしかないんだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます