閑話3

(どうしよう…)


眼の前には白紙とボツの山、それと日記とこの前のホワイトボード。


どれもやらなければならないもの。

どれも考えなければならないもの。


ひとつに手をつけると他が気になる。

他に手をつけるとまた別のものの思考が進む。


10分、5分、いや3分ごとに思考が切り替わる。

ぐるぐる頭の中がかき回されてじんわりと熱をもったようになって疲れる。


額に手を当てて冷却する。


(この設定は…結末がチープ。この設定は…、ああそうだった明日はキュイのご飯を買ってこないと。それとそろそろ掃除もしないと。あとはキュイをどうするかを考えないと。でも今は次を描かないと。ひとつと言わず2つ3つと考えて。この設定は…面白くない、というよりどうでもいいや…)


八つ当たりをしたくなるのをぐっと堪える。


ソファに移動してうなだれていると眠気に襲われる。


まずいと思って机に戻る。


眠気はまだそばにいる。


机に何度か頭を打ち付けてどうにか眠気を払う。


痛みによって目が冴える。

表面の痛みはいい、妙な心地よさすらある。

しかし頭痛は嫌いだ。

脳にプラスチックが刺さったような鈍い痛みと不快感。

全てのやる気が削がれる。


どうでもいいことに思考が逸れる。


ため息をつきながら机の上に目を向ける。


設定を練る。

だからなに?

という案ばかりが生まれる。


仕方がないのでとりあえずペンだけは動かしておく。


今日何度目かのため息。

外は明るくなり始めていた。


まずい、何も描けていない。


とにかく何か、せめて設定だけでも形にしなくては。


思いついたものをひたすら描いていく。

なんの価値もない。

明日、ボツにするだけの紙。


気づけば朝の8時。


なぜだか変な時間からは集中してしまう。


キュイの分だけご飯を準備してバイトへ向かう準備をする。


(あれ?)


ソファから立ち上がろうとした時、激しい眠気に襲われる。


不思議と起きなければ、と言う考えには至らなかった。


覚えているのはふわふわとした心地よさ。

それと脳みそを押しつぶすような痛みがあった。

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