第30話 プニプニ
気だるい身体を起こして伸びをする。
体調は相変わらずの低空飛行。
飛べているだけ良しとしている。
食欲がない。
やる気もない。
リフレッシュにも行きたくない。
キュイ部屋へ向かって柵の中に入る。
柵を開けるや否や部屋の主が出迎えてくれる。
抱き上げて膝の上に乗せる。
悪い子続きだったキュイだがここしばらくは大人しい。
その代わり甘えたがりになった。
近づけばすぐに寄ってくる。
普段あまり鳴かないのにも関わらずキュウキュウと鳴いて理人を呼ぶ。
まんざらでもない。
気だるい身体では柵の中でキュイと遊ぶのが丁度いい。
なによりとても癒やされる。
手のひらから手首、腕、身体も使って肩に登って理人の頬に身体を擦り付ける。
ふわふわの毛が首に触れてくすぐったいのだが野暮なことは言わずされるがままに。
しばらく体を擦り付けていると肩からずり落ちていく。
なんとか踏ん張ろうと服を掴もうとするが結局落ちる。
すぐさまリベンジに上がってくる。
少し気になった。
爪が引っかかった気がする。
手入れをしようと爪やすりを持ってくる。
「キュイ、手出して」
自分の手を出しながら言ってみる。
迷いなく手のひらに登ってくる。
それからまた肩まで登ろうとする。
さすがにわからないか、と笑いながらキュイを捕まえる。
仰向けに座らせるように膝に乗せてお腹を撫でてやる。
何すんの?
まんまるの瞳でそう尋ねてくる。
「ちょっとの間おとなしくしてね?」
手を持って爪を削り始める。
賢いキュイは大人しい。
大人しいのだがずっと手を舐めてくる。
休む間もなく一生懸命に。
ふやけそう。
そう思うほどだった。
削り終わってもう一方の手を持つ。
すでに手はベタベタになっている。
間に撫でたりもしながら爪を削りを得る。
「終わったよ」
言ってみたが動かない。
つついてみる。
ゆびを優しく噛まれる。
もう一方の手でつつく。
両手で掴まれる。
両手が捕まった。
しばらくまたされるがままに甘噛される。
白熱していく。
ものすごい体勢になりながら噛んでいる。
「危ないよ」
そう言って抱える。
思い出したように肩に登ろうとする。
大変だろうと思って寝転がってやる。
すぐに顎の下に突撃される。
中々の一撃。
舌を噛みそうになった。
お返しに撫でてやる。
今日はお腹を重点的に攻める。
(あれ?)
もう一度お腹を触る。
プニプニだ。
(こんなにプニプニだっけ?)
普段はあまりお腹を触らない。
もともとだと言うならいいのたが。
少しつまんでみる。
しっかり摘める。
(もしかして太った?)
ご飯のあげすぎだろうか。
それとも運動不足か。
(こういうものだという可能性もあるけど…)
この前行った動物園のサラマンダーを思い出そうとする。
(引き締まってたようなお腹は出てたような…)
気にもしていないところの記憶なんて言うものもは曖昧だ。
なんのアテにもならない。
(さて、どうしようか)
目の前にはプニプニサラマンダー。
ご飯を減らそうか。
でも、もともとプニプニならご飯を減らすのは可哀想だ。
もう一度お腹を摘む。
見せつけるように仰向けになる。
とりあえず写真に撮っておく。
結局太ったのか太っていないのか。
わからないけどできることは一つ。
(キュイともっと遊ぼう!)
早速家にある玩具を全部持ってきた。
ーーーー
ノートを開く。
タイトル『プニプニ』
今日初めてお腹がプニプニなのに気づいた。
摘めるくらいにプニプニ。
これが普通なのか、それとも太ったのか。
わからないのでとにかく運動させることにする。
そのために新しい遊び道具と玩具を調達しないと。
ダイエット初日、摘めるお腹の写真を貼って経過記録とする
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