第28話

朝、目が覚める


胃が痛い。


当然だ。

昨日の昼食以降何も食べていないのだ。


幸い、気分は良くなった。

しかし食欲はない。


何も食べないわけにはいかない。

戸棚を漁るとインスタントスープが目に入る。


とりあえずこれを食べよう。

そう思ってお湯を沸かし始める。


その間にキュイのご飯を準備する。


作業部屋の扉をそっと開けてキュイの様子をみる。


まだ眠っているようだった。


キュイ用の皿にご飯を準備してそっと音を立てないようにケージの前に置いておく。


お湯が沸く。

カップにインスタントスープのもとを入れてお湯を注ぐ。


くるくるとかき混ぜて一口飲む。


「うえっ?!」


思わず声が出てしまった。


味が薄い。

そう思った途端に刺すような酸味が口の中に広がったからだ。


慌ててスープの賞味期限を確認する。

まだ過ぎていない。


スープの匂いを嗅いでみる。


変な匂いはしなかった。


とにかく流し込んでバイトに向かった。


昼食はゼリー食品にした。


多分風邪の引き始めだと思う。

とにかく食べやすそうなものにしておいた。


お昼時、バイト仲間との話題はキュイの話になった。


「この写真かわいい!もふもふ」


「これはフェルト生地のポーチみたいなのに入って遊んでて、気づいたらこうなってた。静電気ばちばち」


「このは?」


「これは確か…小松菜が嫌いなんだけどね。忘れててあげようとしたら微動だにしなかったとき」


「これは?」


「手を噛まれたから怒ったら逆ギレされたとき」


「え?これめっちゃ可愛い」


「これは見たまんまだよ。どうやったからわかんないけどタオルをドレス・ド・オムライスの玉子みたいな形にして真中から顔出してるとこ」


「じゃあこれは?」


「…わかんない。なんか可愛かった。次のやつは柵のを登って脱走してる最中だね」


「うわ!なにこれ!何があったの?」


「それは次の写真見て」


「うわー、盛大にやられたね」


「そうなの。さっきあったみたいに脱走出来るって知らなくて、家帰ってたら買いだめしてたティッシュをめちゃくちゃにされてた。泥棒に入られたかと思ってたよね」


「えー、でもなんか楽しそうにしてるね」


「でしょー!何しても可愛いんだよね!」


この人にキュイの写真を見せるのは初めてだった。

ついつい思い出語りが長くなってしまう。

一枚一枚饒舌に話していたらあっという間にお昼休みが終わってしまう。


慌ててゼリーを流し込む。

温くなっていたせいか食感が悪くてイマイチだった。

それとやっぱりあんまり味がしない。


多分本当に風邪か体調不良の前兆だと思う。

今日は帰ったら早く寝る。


今日まで日記はお休みにする。

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