間話2 また理人の話
電気を消してベットに入る。
真っ暗になった部屋の中、昼間のことを思い出してため息をつく。
心臓が重い。
既に何度も思い出している。
そのために心は削れていく。
『はっきりと申し上げると面白くないです』
『話の構成がイマイチです』
『魅力がない。絵にもセリフにも。特にキャラクターは酷いです』
『続きが読みたいと思えません』
一つ一つが鋭利で鈍重な凶器。
一つ一つが即効性で遅効性の毒。
『これは本当にあなたが描きたいものですか?』
この言葉がずっと両耳の奥で鼓膜を揺らし続けている。
鼓膜を揺らす。
脳を揺らす。
視界が揺れる。
喉がカサカサに渇いて水を飲みにキッチンへ向かう。
コップに注いだ水を一気に煽る。
気管にはいって咽せる。
暗闇の中、咳き込みながらソファに座る。
落ち着いてから天井を見上げる。
目が開いているのか閉じているのか。
そんなこともわからない。
描きたいもの。
なんだったっけ?
100のアイディアは生まれてすぐに死ぬ。
出来の良い10のアイディアは自らの足で立つ頃に死ぬ。
そして歩き出したアイディアはいとも簡単に殺される。
求められていないと言われて。
ならばと思って求められているものを生み出す。
骨格を組み上げて、肉をつけて、手足を糸で吊る。
こうして造り出されたアイディアはいとも容易く壊される。
そこに呼吸も鼓動もないと言って。
ソファに寝転がる。
チクタクと秒針から鳴る音だけが響いている。
耳鳴りがする。
胸が、肋骨か心臓が痛む。
喉がひび割れたように乾く。
肺は半分しか空気を溜め込まない。
眠っているのか起きているのか。
どっちでもいい。
ただただ気分が悪かった。
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