第24話 正解か不正解か

1日中ケージの扉を開けておいたが結局キュイは中から出て来なかった。

次の日、手を入れて出そうとしてみる。

今回はすんなり捕まえられた。


新品のタイルカーペットの上に置いてあげる。


やっぱり警戒しているのか動かない。


ボールを転がしてみる。

反応はするが何故かタイルカーペット一枚分から外に出ようとしない。

境目でウロウロして戻ってしまう。


お友達のアヒルをタイルカーペットの境目の外に置いてみる。

するとすぐに器用にクチバシを噛んで中に引きずり混んだ。

今日ばかりはアヒルさんにも優しいようでくっついている。


それからもタイルカーペット一枚から外に出ようとしない。

それどころか動こうともしない。


手を出してみる。

一目散に手のひらの上に登ってくる。

お友達のアヒルさんは当然見捨てられその場に転がっている。


胡座をかいた脚の上に乗せて撫でようとする。

するとすぐに脚の隙間に潜り込もうとする。


「そんなとこ入らないで」


抱えようとすると腕と脇腹の隙間に顔を埋めて動かなくなった。


(本格的に駄目かも)


背中を撫でてやる。

ここまでどこかに逃げ込もうとするのは初めてかもしれない。

いつもは怖さ半分、興味半分といった具合だが今回は怖さ100%に見える。


(どうしようかな。せっかくスペースを作ったのに)


少しずつ慣らすしかないのだろうか。

それとも何か嫌がる理由があるのだろうか。


考えながらキュイを撫でているとふと思い出した。


(トンネル、設置してみよう)


前に細いダンボールを気に入って中に入って遊んでいた。

トンネルを設置してみれば出てきて遊んでくれるかも。


そう思ったら善は急げ。

早速ネットで注文した。

遊んでるキュイを想像して一気に届くのが楽しみになる。


今日は無理に外に出すのはやめよう。

そう思ってしばらく撫でたあとキュイをケージに戻すことにした。


(あ、寝てたのね)


いつの間にかぐっすりと眠っていた。


数日してトンネルが届く。

その間もケージの扉は開けたままにしていたが見ている限りでは自分で外に出てきてはいないようだった。


早速設置する。

想像していた1.5倍ほど長かったがキュイ部屋もそれなりの大きさ。


ちゃんと置くことはできた。


そこで悪戯心が芽生える。


ケージに出入りにトンネルの入口を繋げたら外に出てくれるだろうかと。


実際にやってみる。

トンネルの入口を見るとすぐに近寄ってきた。

警戒はしているようだったがすぐに中に入る。


ずんずんと進んでいく。


布製のトンネルはキュイが通っているところが少しだけ膨らむ。

そのままの勢いでポンと出口から飛び出す。


どこだここ?

そんな様子で目を見開いている。


それから大慌てでトンネルに戻っていく。


ケージの中に飛び出す。

向きを変えてまたトンネルに入る。


トンネルから外へ飛び出す。

大急ぎでトンネルに戻る。


それを何度か繰り返す。


(どっちだこれは…)


遊んでるのか怖がっているのか。

怖がっているならトンネルに何回も入らない気がする。

でも怖がっていないならトンネルの外に出た時慌てて戻らない気もする。


しばらく見守っているとトンネルの真中辺りで止まった。


どうしたんだろうと思って中を覗く。


(あ、また寝てたのね)


トンネルの中ですやすや眠るキュイが見えた。


ーーーー

ノートを開く。


タイトル『正解か不正解か』


キュイ部屋に出るのは嫌?なのかもしれない。

原因がわかればいいけど不明。

ただ慣れていないだけかも。

トンネルは高評。

多分。

ケージの入口に設置したらすぐに飛び込んで何回も通ってた。

それが遊んでるのか怖がっていないのか不明。

とにかく様子見。


最後にトンネルの中で眠るキュイの写真を貼ってノートを閉じた。

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