第21話 想定外
荷物が届く。
(きた!)
ネットで買ったタイルカーペット、ペット用柵、カラーボックスがやっと届いたのだ。
受け取って中に入れる。
思ってたよりもかなり小さい。
(おじさんから?)
思ってたのと違う。
とにかく開けてみる。
中にはとうもろこしが入っていた。
おじさんにお礼のメッセージを送る。
せっかくなので今日はとうもろこしを食べることにする。
自分の分は茹でて、キュイの分は包丁で削いで。
「キュイ、とうもろこしだよ」
ケージから出してとうもろこしを一粒あげる。
以前のように目の前に持って与えるのではなく、ちょっと上に構えて自分で食べにこさせるようにしている。
ちょっとした懸念。
自然界で生きることになった時口元まで食べ物を運んでもらえないと食べられないのではまずいのではと思ったからだ。
最初は直立して動かなかったがゆっくりと食べに来るようになった。
しかし小さな問題が生まれた。
食べ終えた指を気の済むまでペロペロと舐められることだ。
引き上げていいのかわからずずっと舐められている。
とうもろこしは悪手だったかもしれない。
一粒ごとに指を舐めようとする。
最後の一粒を食べ終えて、さらに指を舐め終える。
「満足した?」
手のひらに自ら登り、さらに腕にも登ろうとする。
服の上からでも爪がチクチクする。
「どこに行くつもり?」
スルスルと肩まで登る。
「重くなったね」
肩の上で右往左往している。
しばらくされるがままにしていた。
しかし、あまりに降りてこない。
「ほら、そろそろ降りて」
おやつでつってみる。
変わらず肩の上で右往左往している。
「キュイ降りれないの?」
おそらくそうだろう。
なにか唸っている。
「はい、おいで」
キュイを掴もうと手を伸ばす。
「キュウ!」
痛い。
耳に足をかけ、頭の上に登られた。
「こら、痛いよ」
キュイは唸っている。
頭の上にキュイ。
ちょっと面白くなって自撮りしてみる。
見事にこっちを向いている時に撮影できた。
そしてその顔は
(明らかに困ってる)
どこに行けばいいんだ、そんな顔だ。
「肩で降りれないんだから頭からも降りれないでしょ」
キュイを頭の上から降ろす。
降ろされたキュイはそのままケージの方に自ら戻っていく。
珍しい、反省でもしてるようだ。
いいものが見れたと思いながらケージを閉める。
今日はなんとなくゆっくり食事ができる。
とうもろこしを茹で、準備を進める。
また玄関チャイムが鳴る。
出てみるとまた宅配便だった。
受け取って中に戻ろうとすると呼び止められる。
「あと2つありますから」
本当に?、そう思って待っていると薄い板のようなものを2つ持ってくる。
(デカい…)
とりあえず中に入れる。
(どこで組み立てればいいんだろ)
ひとまずキュイ部屋に入れる。
(さて、と)
とうもろこしを食べ始める。
問題は後回しだ。
ーーーー
ノートを開く。
タイトル『想定外』
キュイは登るだけ登って降りれなくなる時がある。
部屋を作る時気をつけた方がいいかも。
届いたものの組み立てはやる気のあるうちにやること。
頭から降りれなくなったキュイの写真を貼ってノートを閉じた。
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