第20話 計画始動

メッセージを送る


ーーーー

理人:遊びに来ませんか?


店長:おー

  いいのか?

  なら行くよ

  おやつでも持っていくよ

  何がいい?


理人:焼肉弁当?


店長:それおやつじゃねぇだろ


美帆:ケーキで!


店長:キュイのおやつのつもりだったんだが…


理人:言葉足らずだよね?


美帆:だね


店長:確かにそうだった…


理人:ありがとうございます


美帆:ありがとうございます


店長:まあいいよ


美帆:私も何か持っていこうか?

  新しいおもちゃとか


理人:雑巾と手袋とか


店長:俺らに何させる気だ?


理人:実はキュイが大きくなってケージが

  狭くなっちゃって

  キュイの引っ越しの手伝いをして欲しいの


店長:OK、そういう事なら手伝うよ


美帆:うんうん

  キュイのためなら頑張るよー


理人:二人ともありがとう

  終わったらキュイとたくさん遊んでいって

理人:写真を送信しました


美帆:待って?

  ここ掃除すんの?


店長:思ってたのと違う…


ーーーー


理人は洗面台の鏡の前で笑顔の練習をしている。

玄関のチャイムが鳴り、理人は玄関へ向かう。


「いらっしゃい。今日はありがとう」


とびっきりの笑顔で出迎える。


「「うわー、嫌な笑顔」」


声を揃えて二人は嫌な顔をした。


笑顔は崩さず二人を招き入れる。


「さあ働いて」


「少し休ませろ」


「まずキュイに会わせろ」


わがままな二人を尊重しキュイ休憩にする。


二人がキュイと遊ぶ傍らで片付けの準備を進める。


「そろそろ手伝って」


二人を連れて作業部屋へ向かう。


「片付いてんじゃん」


そう言った店長に計画を伝える。


「こっち、窓、危ない。こっちに、キュイ」


「ああ、なるほど。わかった。この山どうすんだ?」


「どうしよう」


「この机も動かすのか?」


「そのつもり」


「単純にこっちに動かせばいいか?」


「半分を柵で囲うつもりなんだけど柵の外にもキュイのいろいろを置く場所がほしいんだよね」


「なら半分くらい外に出すしかないか」


よろしくお願いします、と頭を下げる。


「机はこの部屋の方がいいのか?」


「はい、机はこの部屋のこの辺りでお願いします」


「なら最初に机を動かそう。そっち持て」


店長のテキパキした手際と指示で部屋はみるみる片付いていく。


「店長仕事できる人みたい…」


理人と美帆で店長を褒める。


「ここにキュイを放すの?」


「カーペットとか敷いてからね」


「そっか、そうだよね」


そう言うと美帆はキュイの下へ行って遊び始める。

その横に座ってキュイを眺める。


「遊んでくれるようになったんだね」


「やっと私の良さがわかってくれたみたい」


美帆は嬉しそうに言う。


心なしかバシバシと叩かれているように見えるが気のせいだろう。


「写真撮ってあげようか?」


撮ってー、と美帆はポーズを決める。

顔を近づけてキュイとのツーショット。


「撮るよー、3、2、1」


シャッターをきる。


「あはは、店長これ見て」


撮った写真を見せる。


「ぶはっ!何だコレ」


シャッターをきる瞬間、キュイが大きく動いていた。

ブレたキュイの手。

今まさに殴ろうとしているように見えた。


「ちょっとキュイ!いい子だから!いい子だから逃げないで!」


美帆はキュイに振り回されていた。


ーーーー

ノートを開く。


タイトル『計画始動』


キュイ部屋(予定)を整理した。

あとはものと環境を整えるだけ。

カーペットとクッションと新しい寝床くらい?

これから考えていこうと思う。


最後に見事な一撃の写真を貼ってノートを閉じた。

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