第17話 好き嫌い
キュイにご飯をあげる。
今日はほうれん草だ。
「ご飯だよー」
眼の前に持っていくといつも通り4本足で直立不動。
パクリと一口。
そしてフリーズ。
(ほうれん草は初めてだっけ?)
テイスティング。
データローディング。
結論。
いらない。
口からポロリと落とす。
もう一度口に持っていく。
首をすくめて拒否の姿勢。
キュイが亀ならきっと頭は甲羅の中だろう。
「キュイ、好き嫌いしたら…」
駄目なのだろうか?
そもそもあっちにほうれん草はないだろう。
多分。
それなら無理に食べなくてもいいのか?
でも自然界で生きるなら好き嫌いしていたら死んでしまうのではないのか?
悩んだ末今日のところは勘弁してやることにする。
冷蔵庫を開けて中を確認する。
あげられるのはブロッコリーだけだ。
(ブロッコリーかぁ)
食べにくそうだと避けてきたが仕方ない一度あげてみよう。
駄目ならデザート用に買ったいちごはある。
これをご飯にしてもいいだろう。
(というかご飯とデザートって分ける意味あるのかな?)
ふとした疑問は保留にしておく。
ブロッコリーを切る。
バラバラにならないように茎から切り取ると小さなブロッコリーが出来上がる。
「キュイ、新しいご飯だよ」
ブロッコリーを差し出す。
警戒しているのか匂いを嗅いでいる。
パクリ。
フリーズ。
テイスティング。
データローディング。
結論。
食べられる。
もぐもぐと口の中に消えていく。
もう一つあげる。
すんなり食べる。
(ほうれん草って前にあげなかったっけ?小松菜だっけ?)
ブロッコリーを食べ終えたところで確認ついでに意地悪がてらもう一度ほうれん草をあげてみる。
匂いを嗅いで一瞬で首をすくめて拒否する。
(やっぱり駄目か)
ほうれん草は駄目。
覚えておく。
次はいちごをあげる。
(いちごも初めてだけど大丈夫かな?)
とにかくあげてみる。
パクリ。
結論。
食べられる。
早かった。
でも問題があった。
(いちごの汁が…)
口のまわりがベタベタだ。
(なんか獲物を仕留めた肉食獣みたいになってる)
その姿を写真に収める。
題名:ハンターキュイ
くだらない。
食べ終わったキュイを抱き上げて口を拭く。
濡れタオルで拭くとキレイになった。
キレイになったが薄っすらとピンク色だ。
(あとでお風呂か)
先に運動タイムだ。
動けなくなったら困るだろうという考えだ。
今日はあたらしいねこじゃらしを買った。
前に買ったものより高い、丈夫そうなものだ。
キュイの前で振ってみる。
目がねこじゃらしの先を追いかけている。
少し高めの位置で振ってみる。
想定外。
飛び上がって噛みつかれた。
慌てて折れないように動かす。
(セーフ)
「キュイ、離して」
引っ張ってみる。
離さない。
フリーズしている。
「食べ物じゃないよ」
多分味わってる。
結論。
まずい。
吐き出された。
(よかった)
もう一度キュイの前で振る。
無反応。
そっぽを向いてどこかに行こうとする。
「待って待って」
しばらく振ってみたが反応はなかった。
ーーーー
写真を印刷してノートを開く。
◯タイトル『好き嫌い』
ほうれん草は嫌い。
すごく嫌がる。
ブロッコリーは食べられる。
多分好き?だと思う。
いちごは注意汁でベタベタ。
ねこじゃらしは噛みついたあと無反応。
別日にも遊んでみる。
追記:日を改めても無反応。
ねこじゃらしはお蔵入り
最後にハンターキュイの写真を貼ってノートを閉じる。
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