第9話 そういえば

メッセージがあります

ーーーーーーー

美帆:なんか忘れてない?


理人:?

  忘れてないよ?


美帆:いやいや、思い出してー


理人:忘れてない


美帆:キュイちゃん

  会わせてくれる約束


理人:キュイは雄だよ?


美帆:キュイくんか!

  じゃなくて、行ってもいいでしょ?


理人:最近バイト増やしたからわかんない


美帆:店長に言って休み合わせてもらってくる


理人:勝手なことしないで


美帆:雇われ店長が自分も行っていいならなんとかす            

  るって言うからOKしといたよー


理人:勝手なことしないで?


美帆:持ってくお土産はどういうのがいい?


理人:チョコアイス


美帆:自分が食べたいだけでしょ!

  そうじゃなくてさー


理人:ならりんご


美帆:それも自分が食べたいだけでしょー


理人:写真を送信しました。

理人:キュイごめんね。大好物なのに持ってきてくれ

  ないって


美帆:箱でいい?


理人:そんなに食べられないからやめて


ーーーーーー


「キュイ、今度りんご持ってきてくれるって」


りんごという言葉を覚えたのかキュイが駆け寄って来た。


「今度だよ。今はないよ?」


駄目だ。

期待に満ちた目で見てくる。


「また今度、楽しみにしてて」


まだ?早く!

そんな声が聞こえて来そうな目だ。


(そんな期待した目で見ないで)


罪悪感が押し寄せる。


「なら、代わりに少し早くご飯にしよう」


キャベツ、それと今日は人参が手に入った。

キャベツは細く、人参は薄く切った。


「さあ、ご飯だ」


ケージを開けるとキュイが飛び出してくる。


「危ないよ」


なんとか手で受け止めた。

床に下ろしてキャベツを与える。


「キュ…」


小声で鳴いた。

違ってますよ?そうな顔をしてこっちを見てくる。


「今日はこれで我慢して?」


口にキャベツを持って行く。

渋々、といった様子で食べ始める。

明らかに残念そうにしている。

背中を撫でる。

どんどん不満顔になっていく。

キャベツを食べ終わると指に顔を近づけてくる。


(また舐める?)


指をそのままにしていると…

やられた。


ガブリ。


ゆっくりと近づいてきて噛みつかれた。

痛くはない。

しかし、離れない。


「こら、キュイ。離して」


聞く耳持たない。

お返しにほっぺを突っついてやる。


「ほらほら、早く離して」


離さない。

仕方ないので人参を顔の近くに持って行く。

指を離して人参の匂いを嗅ぐ。

そしてゆっくりと口に入れる。


吟味するようにゆっくりともぐもぐ口を動かす。

食べ終わってしばらく目を閉じる。


(この反応は何?)


目を開けるとケージの中に自分で戻って行く。


(満足してもらえた?)


そう思った途端にキュイが理人をチラリとみた。

今日はこれでいいや。

そんな様子だった。


(よかった…のかな?)


ひとまずは機嫌が良くなったようだ。


(でも)


キュイが大きくなってから指を噛まれたことを想像してちょっと怖くなった。

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