第4話 生活基盤 - 1
チュンチュンと、小鳥のさえずりが耳に届き私は意識を浮上させた。
しかし残念なことに、寝起きの為ぼんやりした頭はあまり働いてくれない。
「あ… お腹すいた」
ベッドから上半身を起こし、そういえば昨日は何も口にせずに寝てしまったことを思い出す。自分のお腹から出る音が、小鳥のさえずりに返事をしているようだった。
思いっきり深呼吸をして、ベッドから出る。窓を見れば、小鳥が目に入る。「おはよう」と声を出せば、小鳥が『チュン!』と応えてくれた。
そのままキッチンへ行き、何か食べれるものが無いか探す。が、食べられそうな物どころか、調味料の類も無かった。これでは先に餓死してしまうんじゃないだろうか… そういえばポイント交換で種があったはずだ。完全自給自足になるが、まぁ仕方ない。
「そういえば、外の畑に野菜が実ってたはず…!」
ぐぅとなるお腹をごまかすように、わざと声に出して扉へと向かう。
外へ出ると、朝日が差し込んでいてまるで宝石に囲まれているようにきらきらしていた。こんな綺麗な森に住めるのが少し嬉しくて、無意識に顔が緩んでいく。
そして畑の前に来れば、「美味しいよ!」と声が聞こえそうなくらい立派な野菜が出迎えてくれた。トマト・ピーマン・キャベツ・ニンジン・キュウリ・カボチャの6種類だ。調味料がないので、とりあえず生でも美味しいトマトを3つと、キュウリを1本収穫する。
とりあえず、仕方が無いのでこのまま食べて腹ごしらえだ。
「あ、甘くて美味しい…!」
その場で一口トマトをかじると、口の中に甘みが広がる。今まで食べてきたどのトマトよりも美味しいと言える自信があった。そしてキュウリも歯ごたえがあり、しゃきしゃきだ。
でも、生でこんなに美味しいなら…料理すればもっと美味しくなりそう!
私は夢中で野菜を食べて、4個目のトマトを食べたところで満腹になった。家の中で食べようと思っていたのに、あまりにも美味しかったので全部その場で食べてしまった。
「とりあえず、腹ごしらえはバッチリ…! 次はポイントね!」
13歳になった体で家まで走る。とはいっても、家の前にある畑なので数秒だ。
若くなったことで不便はなくて、むしろ体も軽いし、ラッキーなのでは?と思う。21歳のまま、ここで1から何かをするよりも13歳で始めた方が物覚えも良さそうだしね。
家に入って、ベッドサイドの小さいサイドテーブルに置きっぱなしだった交換日記に目が留まる。そういえば、交換日記だし、神様の返事が来るはず。どのタイミングで来るんだろうか…?
交換日記を手に取り開くと、神様から返事が来ていた。仕事が速い。
- - - - - - -
初めての異世界、気に入って貰えた様で嬉しいな。
僕も頑張った甲斐があったって物だね。
さて、思った以上に苦戦しているひなに、僕からアドバイスをあげるね。それは、《
これは、ひなの適正がある薬術師にとっても便利な、むしろチートなスキルだよ。
実は、効果は割りと何にでも適用される。説明文にだまされないでね?
例えば使い方その1:
植物の前で《
成長速度が大幅に上がります。
例えば使い方その2:
材料を鍋に入れて、《
これで
あ、近くに瓶を置いておくことを忘れないようにね!これ重要。
これでひなはもう分かっちゃったかな?
しばらくは、
そうしたら、今日にでもお風呂分のポイントを軽く貯められるからね。
今日のヒントはこれくらいね?
ふふ、ひなの寝顔可愛かったよ。
- - - - - - -
「え、寝顔……?」
目が点になるとは、このことか。
私の呼び名がひなみから、いつの間にかひなになってるのは別に良い。むしろ神様にそう呼んで貰えるなんて光栄です。
私、覗かれてたのかな? あ、でも確かに暇な時間は私を観察するって言ってた…。
うん。
私は気にするのを止めて交換日記をそっと閉じた。
きっと頬が赤くて熱いのは気のせいだ。
それよりも、神様のヒントの通り
まずは、おそらく一番の基礎と思われる《
パラパラとページをめくると、後半部分に絵の付いてるページが何ページかあった。
「あ、これだ… 体力草!」
体力草の絵と、簡単な説明がのっていた。要約すると、体力草は食べるとHPが10程度回復するらしい。それを
見た目は、なんだろう。ぱっとみはヨモギみたい。1本の茎から、ぎざぎざした葉が何枚も生えている緑色の柔らかそうな草。
神様のヒント的に、
少し思案しつつ、私はあることに気付く。
庭…か、森に生えてるんじゃないかな!?
そうと決まればレッツゴーだね。私はるんるん気分で外に出て、まずは庭に体力草が生えていないか探してみることにした。
「ふぉっ! あった…あったよ!」
探すのが大変かな? と思っていたら、雑草で荒れていると思っていた半分の庭の草は雑草ではなくてほとんどが体力草だった。
つまりは、体力草が取り放題っていうわけです。これならば、今日中にお風呂をゲット出来そうだね。良かった… さすがに今日はお風呂に入りたいです、はい。
庭にしゃがんで、せっせと体力草を摘んでいく。途中、体力草ではないものもあったが、とりあえず今は放置することにして目当ての物だけを摘んでいく。
しかし、摘むのは良いんだけど入れ物が無い。これは不便だ…。
小さい山が出来るくらいに摘んで、ふぅと一息つく。
大体生えていた体力草の3分の1くらいを摘んだだろうか。
次は、これで
まずはキッチンから持ってきたお鍋に体力草を入れる。ちょっと溢れてるが、これくらいならば許容範囲だろう。それを家の中へ持って行き、キッチンで水を入れてから机の上に置く。
次に交換日記を開いて、【瓶:100個】と3ポイントを交換する。
…あれ? どうやって交換すれば良いんだろう。
「いや、ちゃんと【所持ポイント:3】に増えてるから、ポイントはあるはずだ…」
となると、交換方法…は…?
むむむ。まさかこんなところでつまずくとは思わなかった。しかし瓶をゲットしないことには先に進むことが出来ないわけで…。
「3ポイントと瓶を交換して欲しいです…!」
とりあえず、交換日記に話しかけてみた。どうせここには私しかいないから、恥ずかしくなんてないもん。…ないもん。
すると、私の持っていた交換日記が光、私の足元からゴトと物音が聞こえた。
慌てて足元を見れば、大きな袋が1つ置いてあった。しばってある紐をほどいて袋の中を覗けば、たくさんの瓶がつまっていた。やった、成功だ…!!
変わりに私の所持ポイントは無くなっていたが、
大きな袋を引きずって、机の横まで持っていく。こういうことを考えると、13歳の体は少し不便だ。どうしても、体力的な部分では21歳より落ちてしまう。
さて。机の上のお鍋には、いっぱいの体力草と水。机の下には瓶100個。これで私はお風呂をゲット出来るだけのポイントを得るのです。
調合の仕方は、もちろん正規の面倒なものではなくて、神様の加護でいただいたスキルを使います。それがきっと間違いないですね…!
では、いきます。
「《
私の声が室内で木霊し、私を中心に光が溢れ出た。そのまま光は私の前に集まって、弾けた。そこには、体力草が何本かのこったお鍋と足元の袋にぎっしりつまった
どうやら無事に成功したようで、一安心。
袋の中から1つ
「むむ… 体力草がお鍋にまだ少し残っているということは…」
もう一度体力草を摘めば、また100個の
私は急いで庭に向かい、お鍋いっぱいの体力草を集めた。
そしてまた、100個の
「これでよしっと…」
私は今日の分の日記を書いてから、ポイント交換一覧を見る。
なんだかんだで
今日の成果はこの通り。
【交換日記】 =3ポイント加算
【
【瓶:100個】 3×2個 =6ポイント使用
トータルで203ポイント稼いで、6ポイント使用したから現在のポイントは197ポイント。これでお風呂…! どころか増築だって出来るよ!やった。
私は交換するものを選んで、交換日記へと話しかける。
「お風呂、地下室、栽培キット、野菜の種セット、ハーブの種セット、あと瓶が200個欲しいです…!」
【お風呂】 =30ポイント使用
【地下室】 =10ポイント使用
【栽培キット】 =10ポイント使用
【野菜の種セット】 =10ポイント使用
【ハーブの種セット】 =10ポイント使用
【瓶:100個】 3×2 =6ポイント使用
【合計:76ポイント使用】
【所持ポイント:127】
全部で76ポイント。これで残りのポイントは127ポイント。
うん、まだまだ余裕がある。いきなり全部交換しても使いこなせないだろうし、増築は掃除も大変そうだからね。とりあえず、お風呂。あとは作った
すると、どこからともなくゴゴゴゴ…と音が聞こえてきた。
な、なんだろうと一瞬焦ったが、その音はすぐに止んで、代わりに家に変化が現れた。
入り口のすぐ横に地下に続く階段が出来て、トイレのドアがあった所は少し奥に伸びて短い廊下が出来ている。そして廊下の左右にドアが2つ。私は早速出来た廊下へ行き、ドアを開ける。おっと、トイレだった。となると、お風呂は左側のドアだね…!
「わ、わ、わー…!!!」
思わず感嘆の声を漏らさずにはいられなかった。
超絶可愛いお風呂が私の目の前にあるのだから…!
そこは可愛い、けどゆったり足を伸ばせる大きさのバスタブに、もちろん水道の魔道具はキッチンと同じでお花だ。けど、ここにはお花が2つある。水色の花と、ピンクの花。これはもしかすると、水とお湯で別れているのだろうか。
私はさっそく絵が描いてある葉の部分へ触れ、お湯を出してみた。
「あ、あったかいようぅ~!」
あー… これは癒しです。癒し。
手だけにかけているだけだけど、じんとして身体が温まるよ。
お湯が私の手を伝って、バスタブの外にこぼれる。排水溝もきちんと作ってあり、水は外へと逃げていく。残念ながらシャワーは無いけど、大きい葉っぱで作られたオケに、可愛いキノコの椅子が備え付けられていたからそれで十分だ。
ちなみに、用意が良いことで…お風呂のドアの横の棚にはタオルがしまってあった。それと固形の石鹸も1つ付いていたので、私はそれを使ってお風呂を堪能した。
神様、今日も1日ありがとうございました。
お風呂、とってもとっても気持ち良いです。
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