人龍の助言

魔骸の欠片(1)

 この本の最初に私は、この本が身勝手な龍族を断罪する本と言った。

 それは確かに間違っていない。


 ただし、一つ断りを入れておこう。

 確かに私にも、龍族の血はしっかりと流れている。むしろ現存する龍族の中で最も祖の血が濃いと言っても過言では無いだろう。ただしこの本を手に取ったのが白帝かイレルの龍でなければだがな。


 では何故私は同族を嫌悪するのか。



 確かに龍族は最強だ。全ての種族を凌駕する圧倒的な技量と研究の成果を抱え込んでいる。

 だが、それを良いことにフェ―ラー様に取り入ろうとするのはもっての外だ。


 ましてや他の種族を束ね王や帝を名乗り統治するなど許されざることだ。初代の龍神様が見たらなんと思うのだ。


 なんの為の力だと思っているのだ。その莫大な力があれば貴様らは自分の大切な家族だけを守り通すのは容易なのに、何故欲を出してこの世の実力者を片っ端から消していくのだ。



 近年ではあの愚か者共は一つしかない龍神の席を奪いあい、あろうことか自らの鱗の色をつけて自称していると言うではないか。


 皆銀の鱗を持つ、同族ではないのか。何故認めることができんのだ。


 龍神の座はもう無いと言うのに。覇を唱えられるわけがないだろう。



 申し遅れた。私の名は”龍神”アルヴァリー。まあこの本が世に出た頃は多分もう龍神ではない。


 まあ肩書なんぞどうでも良いな。要するに私は繋ぎの龍神なだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。


 この本を読む龍族で自分の名前がわからぬ者よ。貴方様の名前は”龍神”ローネ、もしくは”龍神”トビアスのどちらかだ。


 自分にエルフの血が流れていれば君はローネで、魔の血が流れているのであれば君はトビアスだ。

 まあいずれにせよどちらかが本物の龍神となり、龍族をお導きくださることだろう。


 もっとも龍皇であっても龍将であっても構わないけどね。



 まあ君たちは何故ここにいるのかわからないよね。なにせ記憶を飛ばして封印されていたのだもの。

 私も同じさ。


 封印の龍。といっても私が君たちを知っているだけで、もっと封印されている龍は多いのかもしれないけどね。


 とりあえず僕が知っている、僕以外の封印されている龍の中でも龍族を救う救世主としての役割が期待されているのが君たちなのだよ。


 まあいきなり救世主になってもわからないだろうから順を追って説明する。

 しっかり最後までよんでくれると助かるね。



 さあ、始めよう。


 断罪の話を。

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THE DRAGONICK STORY ただし @TADASHIDACE

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