タイトンに巣食う古龍族(2)

彼は、殺した。殺してしまった。自分の母を。

なりふり構わず父の復讐をして、それに巻き込んで、自分の母を。


彼は自分の眷属である”黒竜”ブラックワイバーンを用いて大規模な復讐をし、隷王国ソゼウの心象を大変悪くした。


”親殺し”アラステア・ジルス・グラックス。


いつしか、悪意を込めて彼はそう呼ばれるようになった。


彼は失意の底に沈んだ。


しかしエーベルハルトは違った。彼は兄の失態を利用しようと考えたのだ。


彼は失意のアラステアを何らかの方法で騙し討ちにし、封印した。


エーベルハルトは”黒龍神”の名を得た。

アラステアを封印したその功績によってだ。


更にエーベルハルトは自らの眷属さえも手にかけようとした。


彼の策略により、ほとんどの黒竜は死に絶え、後に残った骨は後の著名な魔剣郡、”黒竜魔剣”の材料になり、ドワーフ族の間で流通した。


ついに最後の黒竜の根城。黒龍山に登るエーベルハルト。


だが、エーベルハルトは無知を晒した。


その黒龍山には古代黒龍の宮殿があったのである。


レゲンデ・アレラの父は龍神の血族、”豪龍帝”アーマンであり、とても精巧な技術と芸術に関する造詣を持ち合わせていた。


代々黒龍族は、芸術の家系なのである。


当然である。でなければレゲンデがファーレンエンジェルパレスの建設に携われる訳がない。


黒龍宮殿では、その本家とも言える技術がふんだんに使用されていたのだ。ファーレンエンジェルパレス自体がとても精巧な仕掛けで作られているのだから、これも当然である。


そして最期の敵、”黒竜王”アマルディ・アレラ。別名、”黒の門番”。


ブラックワイバーンを統べる王であり、黒龍神の忠実な下僕。

黒龍神の称号を手にしたエーベルハルトなら、簡単に通過できる、はずだった。


だが、ブラックワイバーンは生涯に決めた一人を自らの王にする。

そして、エーベルハルトには懐かなかったのである。


黒竜王は頑として抵抗した。が、抵抗むなしく怒ったエーベルハルトに惨殺される。


だが、黒竜王はその身を引き換えに宮殿内の装置を作動。山の中の宮殿ごと崩れ、エーベルハルトは物理的に封印された。


敵が居なくなった黒竜たちは、宮殿がなくなり、崩落した山の・・・カルデラとでも言おうか。そこに住み着いた。


黒龍族は、それをもって完全に滅んだ。



出典 アーマン・ルードル・ホーリーファウンド著 『龍歴』



さて、ここで黒龍は一度歴史から姿を消す。


次に現れるのは、そこから更に5000年後となる。

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