第75話
死んだ英雄は勇者の武器となって復活を遂げる。
その奇跡を間近で見つめたアシルはフレンが構える威風堂々たる両手剣――戦王剣グランフォースに勝算を見出した。
(<
・名前『戦王剣グランフォース』
・攻撃+S
・守備+S
・レア度『
・勇者フレンの魔力で形作られた<叡智ノ剣>に大戦士グランツの魂が宿った姿。
・この剣を装備したフレン・レイフォースは大戦士グランツの
従って専用装備を得たフレンのステータスも大幅に向上する。
名前 フレン・レイフォース
種族:
最上位
Lv44
体力:S
攻撃:S(戦王剣装備時、SS)
守備:A(戦王剣装備時、S)
敏捷:S
魔力:S
魔攻:S
魔防:A
<
・
<
・魔導覚醒
・叡智ノ剣
・叡智ノ盾
・叡智ノ衣
叡智ノ盾を捨て、両手で戦王剣を握るフレンと
揃って新たな力を得た二人を目の前にしても、
『――所詮、ヴラドに殺される程度の王国四英傑。その力が加わったところで、何も変わらん。地力が違うのだ』
「……それはどうだろうな」
アシルは目深に被ったフードの下で笑みを深くする。
今のアシルは
つまり、ノルや他の
「<
アシルはフレンが持つ戦王剣に吸命杖パンドラを近付けた。
寿命を吸えば吸う程、威力が高まる。その効果は杖になっても変わらない。
「……これは……?」
一瞬、フレンが顔をしかめた。
戦王剣グランフォースから漆黒の瘴気が漏れ出したからだ。
暗黒闘気。それは目の前の首なしの騎士を筆頭に魔物が扱う力。
『……なるほど。私を倒す策があるとは、あながち嘘でもなかったらしい』
原理を理解したエルハイドがアシルをそう評した。
ノルの力を得たアシルが最初に行使した<
その霊体がフレンの魔力と混ざり合って実体を得た戦王剣は半ばアンデッドの一種と言って良い存在である。
つまり
その強化具合も、際限なく寿命を注げばその効果はノル以上を見込める。
「……闇の力を振るう事に抵抗感はあるか?」
「どんな力だろうと、もう守れれば何でも良いよ」
どこか吹っ切れた表情のフレンにアシルは頷きを返した。
「二人は下がっててくれ。ここからは気にしていられない」
「……分かりましたわ」
「ん」
ヘレナとノルが二人を置いて足早に去っていく。
エルハイドの襲撃で、騒ぎ立っていた住民達の姿もいつの間にか消えている。領主の館付近でサフィア姫とフィーベル騎士団が避難誘導に励んでいるおかげか。
静けさに満ちた城塞都市カルランの大通りにある広場で、三人が激突する。
『――死ねッ、人間共!』
「……!」
地を蹴ったフレンはエルハイドが振るった一刀とまともに剣を重ね合わせた。先ほど剣を受け止めた時は押し負け吹き飛ばされたが、今度はびくともしない。
『ほう?』
顔がないので表情が分からないが、感心しているのは間違いない。
それから二人が幾度も打ち合い、一見互角に見える戦いの裏で。
アシルは吸命杖の先端の方を掴んで、それから柄の部分を横にスライドさせる。
現れたのは血管が張り巡らされた銀の刃。
吸命杖パンドラは仕込み刀になっているのだ。
「――<
死霊術師の力を得た事で、魔力は格段に増えたが身体能力の上昇はない。
だが、自分自身に強化をかける事はできる。
暗黒闘気を身体から溢れだしたアシルは黒のローブを靡かせ僅かに遅れて参戦する。
『むうッ』
フレンが受けるはずだった斬撃を強引に割り込んでアシルが弾く。
彼もまた、エルハイドの攻撃に揺るがない。激しい斬撃の応酬。
火花が散る視界の外、フレンが側面に回り込んでエルハイドの肩に一刀を浴びせる。
先ほどは
だが今度はただの斬撃で鎧を削り取る事ができた。
流石に紙のように斬り裂く事はできないが、以前と比べて威力が段違いだ。
少量の血がフレンの戦王剣の刀身に付着していた。
『――人間風情がッ』
再びエルハイドは暗黒闘気と雷魔法を混ぜ、黒い雷を身体に纏う。どうやら本気で相手をする事にしたらしい。
「――本気を出していないのは僕も同じだ。行くぞ、友よ」
フレンが叫んだ。
応えるように戦王剣が震える。
「<
その瞬間、フレンは防御を捨てた。
外見上は何も変化がない。
アシルが叫んだ。
「何やってるッ!?」
フレンは自らエルハイドが振り下ろした<
その軌道上から言って、胴体を真っ二つにされる未来が嫌でも脳裏を過ったが、
『何だと!?』
エルハイドが激しく動揺した。
何故なら自らの渾身の斬撃がフレンの肌を一ミリも突き破れなかったからだろう。
(残念。グランツの固有技能は七回まで敵の攻撃を無効化できるんだ)
「――<
肉薄した状態で、フレンが両手剣を大上段から振り下ろした。
黄金の炎と黒い雷が激しく接触し合い、雷の方が真っ二つに裂かれる。
エルハイドの身体から鮮血が勢いよく噴き出した。
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