第6話 チュートリアルとサイダ王
「つーかーれーたー!!!」
ついに最後の一匹を討伐した私は、思い思いにフロアを見つめる。
何だったんだろうねこの魔物達は……、いやほんとにさ。最初の方こそ可愛い可愛い犬さんと騎士だったからなんか申し訳なくってさ。
頑張って頑張ってソイツらを纏めて気絶させるだけに留めていたんだけど、あんまりにも数が多すぎてね。
「もーやってられるか!このイヌッコロ共め、人様に噛み付くということの愚かさをその身に刻んでやる」
何処の悪党だよ。と思いたくなる言葉を吐きながら、私は頑張って魔物と騎士を討伐したのでした。
▶〈邪界騎士モルゴース〉・〈邪界大狼フェンリル〉の討伐を確認。
▶〈文名 律可〉に対するチュートリアルを終了します。
▶ステータス表示が変更されました。これにより先程までのステータス表示の仕方を変更、修正します。
▶ステータス表記が簡略化されます。
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【文名 律可】〈Lv1〉〈人間種〉
【HP】〈10000/10000〉
【MP】〈10000/10000〉
【物理攻撃力】〈5〉
【魔法攻撃力】〈1〉
【総合防御力】〈2〉
【敏捷反応力】〈2〉
【総合幸運値】〈-1000〉
【保有スキル】
『【全能なるゴリ押し術〈Lv1〉】【強行突破〈Lv1〉】【
【保有魔法】該当無し
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……?フォントが少しだけ変わったのかな。というか些細なことのために、いちいち私の視界の中にステータス出さないで欲しいなぁ。邪魔だし、鬱陶しいし。
そんな呑気な感じで、私のチュートリアルは無事終わったようである。
ってかコレチュートリアルだったの?あんまりにも敵がヤバそうなやつばっかりだったから、てっきりボスラッシュ的な話かと思ってたのに。
「────まあ取り敢えず外に出ないとなぁ……しかし参った、私のチェーンソーが無事にお亡くなりになってしまった。ぅぅ、ごめんね。私の扱いが雑だったばかりに……」
中程からポッキリ行ったチェーンソーを墓標のように地面に突き刺し、私は手を合わせて。
「(─どうか、美味しい焼肉が食べれますように。あ、安いやつでいいのよ?高いのとか逆に食べにくいし)」
どうしてそれをチェーンソーの亡骸に祈ったのか。まったく他人には理解できない行為をする律可である。
◇
とりあえず私は光り輝く扉をめざして歩き出す。足が勝手にそちらの方に向かって進み始めたので、仕方が無いんだけど……。
普段からゴリ押し専門な私は、勝手に体を動かされるという感覚が心底気持ち悪かっただけなのです。
だから扉を開けた瞬間、王様が対面したのは死ぬ程テンションの下がった律可だったのは言うまでもないだろう。
◇
「よくぞこのダンジョンを攻略して見せた、異世界の転移者殿。わしはこの国……サイダ共和国の3代王様である、〈サイダ・サイダ〉である」
「はあ、いや、どうも?」
「うむ、長い戦い……実にご苦労であった。そして最初に……服を着てもらおうか、律可殿」
「?私の裸なんて見ても誰も嬉しくないと思うけどなぁ?」
なぜそんなに過小評価しているのか分からないが、律可は普通に年頃の女の子の中でも一二を争うスタイル美人なのだが。
ただ、その肉体には筋肉がしっかりと無駄なく備わっており……見た人はギャップに思わず吹き出すと言われている。
「こちらをどうぞ、多分着れると思います」
「あ、どうも。……ふーん、いいじゃん」
私はかろうじて残っていた胸と股に着いていた布の切れ端をぺっ、と投げ捨てて新たな服を着る。
なんだろう、材質はユニ〇ロ?のジーンズに近いのかな?にしてもすごいね、ちゃんとパンツから下着までしっかりとあるじゃん。
あ、でも……、私すぐに服破壊されちゃうからもったいないなぁ。
そう言いながら、私は割と高価そうな下着を眺めていた。
誰かこの女に早く服を着てくれ。兵士たちが必死に目を逸らしてそっちを見ないようにしてるから。と伝えてくれ。
◇◇
「────それで?王様がいかようなのですか?」
「お主達は異世界からの人間だと私は心得ておる。そしてあのダンジョンを踏破したものに、一つ頼みたいことがあるのだ」
「はあ、えっと確認なんですけど、あのダンジョンを私以外でクリアした人とかはいなかったのですか?」
「───まだ分からぬ。だが、早々に他のものは心が折れた様であるな」
「なるほど、まあそれであれば仕方ありませんよね」
そう言いながら私は
「(え、まじで?いやぁなんつーか、面倒事を押し付けられる予感がプンプンして嫌なんだけど?)」
内心、死ぬ程うわぁ。と思うのでした。と言うか改めてよく見るとこの王様さっき中で見た人にそっくりじゃん。
どちらかと言うと悪役みたいな感じで出てきたから、気が付かなかったけど、確かにこの見た目の王様ってどうなんだろうか。
「あの、さっき中で煽ってた人ですよね?人違いでしたらすみませんが」
「……よく分かったね。確かに奴らを焚き付けるために煽らせては貰ったが、あれはあまり気持ちの良いことでは無いのだ」
確かにね。顔だけは割と優しそうだもんね、王様。仮面ライダーの悪役に居そうなゴッテゴテの服とギャップ萌えレベルの優しそうな顔は似合わないとは思う。
「にしても今は何の時間なんですか?私一人を歓迎するため、にしては多すぎると思いますし」
「ああ、この後すぐに分かるだろう。……にしても、今回はこんなに強い転移者が来てくれて助かったぞ」
「そりゃどうも?そう言えば他のクラスメイトはどうなるんですか?もしかして」
「ああ、それは───」
「もしかして食肉?それとも休み無しで働かせる系?あー、分かった魔物の餌とか?それか爆発する魔法とかを仕掛けて自爆特攻?」
なるほどね。確かに異世界転移者は魔力とか、いろんな面で爆弾には最適だよね。だって日本人って上の人の命令に逆らえないし、同調圧力にも弱いし。
こうしてみるとなんとも変な人種だね、日本人ってのは。
そんな風に考えて私が相槌を打っていると、目をぱちぱちさせた後王様は。
「───あ、あの?そ、そこまで非人道的な行為はしないのですぞ。というか凄い容赦のない考えですな?!………同じ国から呼び出された人間に対する感情があまりにも冷酷過ぎませんかな?!」
あ、あれ〜?違うんだ。じゃあ何に使うんですか?と私が尋ねると、王様は。
「強力な魔道結界の維持と、辺境の防壁に赴かせて協力しての戦線維持……あとは魔道具を産み出させる等です」
案外まともだったよ。まあ確かに私が少しだけ(?)極端だったのかもね、でもなんか反乱とか起こしそうだけどなぁ。力を持っただけの一般人とか、すぐにね。
私のその考えを読んだのか、サイダ王は。
「心配なく、隷属の魔法で奴らの魂を縛るのでご安心を」
「便利ですねー。魔法……そんな力も有るのですね?」
「──それにしてもそろそろ、のどか乾いたのではありませんかな?」
王様がそう言うと、騎士たち……後ろの方で控えていた騎士実に1000を超えてそうなソレの中の、とりわけかっこいい見た目の人が歩いてきて。
「サイダ様、お茶をおもち致しました。此方はアッザム茶でございます」
そう言って持ってきてくれた。アッサム茶では無いらしく、見た目は───、
「これはお茶ですか?どう見てもチョコレートに見えるんですけど?」
ドロッドロの、チョコレートを煮詰めた奴がカップの中にドボドボと入れられていた。どうしよ、すっごい甘ったるそうなんだけど……断るのも何か不味そうだしなぁ……。
──まあゴリ押しで飲んじゃえ!
律可は短絡的な人間であった。
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