第24-1話
「恐ろしいことを言っていると思われるかもしれませんが、上手く行きます。みなが納得する形に私が導きます」
「もし上手くいかなかったら?」
デミアン様の反応、やはりグレーに対してはどこか思い入れがあるように見える。
「もし上手くいかなかったら、そのときは、
私の首を、グレー様たちルワーナ騎士団に差し出します」
「そんな…」
「私の復讐は生きるか死ぬかです。
上手く行かなったときは、私は死を選択します」
「ローズ様…」
「覚悟なきものに、何かを成し遂げることは不可能なのです」
できることなら、
デミアン様の思い入れのあるグレーが統治するビスカスを選びたくはなかった。
けれど、選択肢はビスカスしか残っていない。
東の都・ソルティは距離的に遠すぎる。
アンディークから東の都・ソルティーまでは最短で行ってもまる2日かかる。移動時間は短い方がいい。
それに、私たちに必要なものはおそらくソルティーにはない。
北の都・リバリフト、
多くの利益を出している豊富な鉱山資源は魅力的だが、こちらも移動時間がかかる。
以前なら短い時間で移動できたのだが、
元々の移動手段であったリビーフ大橋はオドールの爆殺の関係で崩落した。
今は旧来の方法である、
カリビア大橋を使っての移動が1番早いとされている。
カリビア大橋での移動となると、マリアットを経由することもありソルティ同様2日はかかってしまう。
一番の問題は統治者だ。
ソルティーとリバリフトを統治するのは、公爵家の長男ロバート・ロッキー、そして王家の次男、べギール・ロミナだ。
この2人の残虐性を知っているからこそ、できるだけ関わりたくない。
「たしかに、ローズ様の仰る通りです」
デミアン様はそれ以上は何も言わなかった。
「私はここに残り作業を続けます。デミアン様はどうなされますか?」
「私は離宮に行って、剣術の稽古にはげみます」
お互い気持ちは、同じか。
何も考えたくないとき、私はシエル庭園にデミアン様は離宮に行く。
デミアン様のことをつい考えてしまう、この心を無にしたい。
……
早朝、アイカス神殿。
クリスタル様のことで、パウロと会うことになっていた。
「クリスタル様の居場所は…」
「…」
「そうですか、よりによってあそこにいるなんて…」
パウロからの報告に、無意識に下を噛んでしまった。
「長いこと人探しをしていますが、ここまで時間がかかったのはクリスタル様が初めてです。よほど隠しておきたかったのでしょう」
「大変な仕事を任せてしまいましたね。私がビスカスに行ってる間、ゆっくり休んでいてください」
「大変なんてことはありません。ビスカスに行くのなら念の為、家の中でも武術に長けた者を同行させましょうか?」
「それは、大丈夫です。
こちらは婚約が決まったばかり、何か仕掛けるのはかえって向こうのリスクになります」
「それにグレーはそういった卑劣な行為ができるようなタイプには見えませんでした」
「わかりました、必要なときはいつでもお声掛けください。ところでローズ様は、デミアン卿のことを愛しているのですか?」
パウロから不意に飛んできた質問。パウロのことだ、おおよそわかっていて聞いているのだろう。
わかっていても確認したくなるときがあるのは、私もよくわかる。
「愛の対象に人を設定することだけは、私の本能が拒絶します。もう時間ですので、行きますね」
「お気をつけて、ローズ様」
本当の絶望を @Yunami-Sana-21
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