第23-1話

「お待ちしておりました、ローズ様」


ガレットとの石碑でのやり取りの中で、四大名家当主の4人が私と話したがっているとの報告を受けた私は、話す機会を設けた。


サレットが呼んだのか、この場には息子であるガレットも同席していた。


「ローズ様、話の前にまずは婚約おめでとうございます」


当主たちは、屈託のない笑顔を私に送ってくれた。


祝福されることに慣れていないからか、こういった場合、どう反応すればよいのかよくわからない…


「ありがとうございます」


心の奥で湧き上がる気持ちを抑え、平常心を保つ。


「それを伝えるために集まってくださったのですか?」


何か話たいことがあるのだろう。

でなければ、この4人がわざわざ私の前に顔を出すことはない。


「本題ですな…」


トンゼは言いずらそうな表情を見せた。


「王子・ラビラ様と妹のミカエラ様の結婚式後、ローズ様が頬を赤く腫らしていたと、息子から報告を受けました」


トンゼに代わり口を開いたのはサレットだった。


トンゼとは違い、その存在感が薄れることはなく、いつものサレットを貫いていた。


「失礼ながらパウロにお願いをし、色々と調べさせてもらいました」


サレットは深々と頭を下げた。

その姿を見たパウロも、サレット同様深く頭を下げた。


「そうですか…

私の過去を知ってしまったのですね」


それくらいのことか…

よかった。


いずれ知られるとは思っていた、気にすることではない。


ただ、ガレットがサレットに私の頬のことを報告していたのは意外だった。


ガレットらしくない行動だ。


「私たちは、ローズ様に忠誠を誓います」


ザビラが口を開いた。


「忠誠…

それは私が王妃様から優遇されているからですか?」


みなの顔が一斉に曇った。


「それとこれとは、話が別です。

過去を知り、ローズ様が考えていることはわかりました」


「そこで私たち一同、心から協力したいと思ったのです」


ここまで感情的に話すザビラを見るのは初めてだ。


私の過去を知り、同情したと…


「みなさんは、王妃様と一体どのような関係なのですか?」


この機会を設けると決めたとき、必ずや聞かなければならないと思っていた。


これ以上は、あやふやにしておけない。


「今はまだ話すことはできません…」


「ですが、いつか必ず話すことを約束します」


ザビラの口調から、何度聞かれても答えることはできない、そのような意志を感じた。


「そうですか…」


「多くのことを約束していますね、私たちは。

約束とは、守ってこそ意味を成すこと。それだけは忘れないでください」


当主たちは、左手で自らの首を掴んだ。


アンディークでは、忠誠を誓う際、左手で自らの首を掴む伝統がある。


この忠誠は、命をかけることを意味すると、蔵書室で読んだ本に書かれていた。


嘘はついていない、そう感じた。


同情といえど、四大名家の当主たちに忠誠を誓わせることができたのは、それだけでも大きな収穫だ。

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