第22-1話

ミカエラとラビラの結婚式から一週間が経った。


私は部屋にこもり、あの日の出来事、それまでの自分の行いを振り返った。


今回の件、私にも落ち度はあった。


避けてはいけない問題から、目を背け続けていた。


いつの間にか、気付かぬうちに、私はアンディークという環境に甘えていた。


人とは簡単には変わられない、誰もが1度は耳にしたことのある言葉の意味を痛感する。


もう大丈夫、いや大丈夫ではない。


だが大丈夫かは関係ない、やるしかないのだ。


怒り、悲しみ、憎しみ…


私を絶望させた人たちへのマイナスな感情が、再びエネルギーとなって私を動かす。


今日は天井を見ても、何も映らない。


「ソフィー、デミアン様の具合は?」


「まだ、部屋にこもりっきりのようです」


「そうですか…」


あの場でお母様の攻撃から私を守ってくれた人は、デミアン様だけだった。


デミアン様は、私を守ったせいで目の前で激しい暴行を受けることとなった。


自分が受けた苦痛以上の苦痛を感じた。


そばに行って声をかけてあげたい…


けれど、私はデミアン様の隣に行っていいのだろうか…


その資格があるのだろうか…


考え続けるほど、答えは遠のいていく。


今は、私がやらなければならない事に、全力を捧げる。


布団を蹴りあげ、立ち上がる。


……


「一定の金額以上の不正を働いたものたちの暗殺は、もうすぐ完了します」


「わかりました、ご苦労様です」


ガレットの仕事は完璧だ。


いつも迅速かつ正確、証拠1つ残さない。


「ガレット、1つ聞いてもいいですか?」


「もちろんです。いかがされましたか?」


「貴方たちパシー家が、南の都・ビスカスのルワーナ騎士団と戦ったら勝機はありますか?」


急に出てきたルワーナ騎士団の名前に、

ガレットは眉を細めた。


「真正面から戦ったら話になりません。

5分もたたずして殲滅(せんめつ)されるでしょう」


「何らかの方法で奇襲に成功したとしても勝てる確率は10%程度かと」


ルワーナ騎士団。

南の都・ビスカスに使える騎士団として、国内1の騎士団との呼び声が高い。


その力は隣国からも恐れられていると言われている。


「ルワーナ騎士団、トンゼ様たちも仰っていたけど、それほどなのですね」


「1人1人の戦闘能力だけ見れば、パドリセンや、リバリフトの騎士の方が圧倒的に強いです」


「ただ、騎士の数が多すぎるのと、不屈の闘志とでもいうのでしょうか、彼らは死ぬまで戦い抜きます」


「1番敵にしたくないタイプですね」


「彼らは、集団連携という彼らだけのスタイルをとる事で最大限力を発揮します。1対1を作り出して戦うしか勝ち目はありません」


ガレットにそこまで言わせるとは…


「ではルワーナ騎士団の長、騎士団長グレーとガレット様が戦ったらどちらが勝ちますか?」


あの日垣間見たグレーの強さ。

相当強そうだったが、実際の実力はいかほどなのか、気になったことをそのままガレットに聞いた。

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