第10-1話


蔵書室に一月籠っていたときのことだ。


アンディークに関する文献を読み漁っている中で、旧王家に使え、裏からアンディークを支えていたものたちの存在を知った。


彼らは、四大名家と呼ばれていて、

各家ごとに分野は異なるが、暗殺、調査、農業、

貿易を極めたものたちの集いとされている。


今でも彼らは存在していて、裏の世界で活躍している。


駒として、

これ以上利用価値の高いものたちなどいない。


どこに住んでいるのか、依頼の仕方など、

名家に関する大概のことは、大量の文献を研究し尽くし、把握している。


「私は侯爵家令嬢のピアール・ローズです、

事情があり、ここアンディークに来ました」


「旧王宮の蔵書室で、四大名家の存在を知りました」


「旧王宮だと!」


パウロの態度が急に変わった。


「旧王家に侯爵家のものが入れるはずがない!」


「私もよくわからないのですが、

王妃様がデミアン卿に住ませるようお願いしたようです」


「王妃様ですと!」


旧王宮、王妃様という言葉に、パウロは大きく反応を見せた。


「申し訳ございません」


パウロは、首からアイスピックを離すと、すぐに

手当をしてくれた。


旧王宮、王妃様、4大名家に何か関わりがあるのだろうか…


OPENになっていた店の看板は、

CLOSEへと変わった。


~~


「しかし王妃様が…」


目の前にいるこの人物が、

ウォード家当主で調査の専門家ウォード・パウロであることは間違いない。


先ほどから考え込む姿を見せているが、

何を考えているのか全く読めない…


本人が意図してやっているのかもわからない。


「ローズ様、依頼を伺ってもよろしいでしょうか?」


「ある男について調べて欲しいのです」


「身辺調査ですな、一体誰を?」


「アンディークの統括権を握っている男です」


「オドールですか…」


パウロは、氷だけが入ったグラスを何周か回す。


「読めませんな、一体何をお考えに?」


「それは調査の後にお話させていただきます」


「まぁ、いいでしょう」


パウロは依頼を承諾してくれた。


店を後にし、馬車に乗り込むと、

今まで押さえ込んでいた重圧が私を襲った。


経験のないことを、手探りでなんとかやり遂げた。


交渉は成功したが、終始生きた心地がしなかった。


アイスピックを突きつけられたときの

パウロのあの雰囲気…


お父様以上に有無をいわせない何かを感じた。


当主はあと3人…

最低でも同じようなことを3回繰り返さなければならない。


今まで味わったことのない緊張感…

生きるか死ぬか、両者のせめぎあいの中で、

私は常に勝ち抜いていかなければならない。

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