3.青い服の男性

 ここらで私が大学生だった頃の話でもしよう。実際には私ではなく友達が体験した話だが、間接的に私もじわじわきた体験談だ。


 私が通っていたB大学は、学生の間で「出る」と噂が絶えない大学だった。歴史ある大学で建物がとにかく古かった、というのもある。黒い影が横切るのを見た、だとか、誰もいないはずのところから音が聞こえた、等々の噂がよく有り、中でもほのぼの怪談話として「ケータイの電波が届かないから電波来いと念じたら天井付近から足音がした直後にケータイが繋がった!」というものがある。いやそれ怪談話としてはどうなんだ?

 まぁそんな感じの大学生活、私は友達との待ち合わせの為に構内のカフェへと向かった。そのカフェスペースの側には学生共用パソコンブースがあり、授業の空き時間や昼休みには学生が自主学習する姿が度々あった。

 が、カフェスペースに友達の姿を見つけた時、パソコンブースには誰もいなかった。珍しいこともあるもんだと思いながら友達に声をかけると、友達は私の方を向いて手を振り、雑談を始めたところで、ふと友達が声を上げた。

「あれ? さっきそこに男の人がいなかった?」

 私の後ろには件のパソコンブース。そこに、友達曰く、私が声をかけた際に男の人が座っているのを視界の端で見ていたという。それも、青い服を着た男性だった、というのだ。

 当然ながら私は首を傾げる。「ここに来た時は誰もいなかったよ?」と。

 私が声をかけてから再び友達がパソコンブース方面に目を向けるまでの間は、約十数秒。その間にパソコンブースから何者かが気配無く瞬時に消えることはほぼ不可能で、友達はびっくりして途端に顔色を悪くした。さらには唐突に頭が痛くなってきたと言い出して、慌てて私はケータイに着けていたお守りの鈴を厄除け代わりに鳴らしたりしてわちゃわちゃとしたものだ。


 ただねぇ、今にして思うのです。

 友達には言えなかったのだけれど、私たちが通っていたB大学……


 女子大学なんですよ。


 もちろん、女子大だからと言って男性がまったくいないというわけではない。男性教諭や大学に出入りしている業者の人がたまたまそこにいた、という可能性はある。

 しかし、学生向けに解放されているパソコンブースに、男性教諭や業者の男性が、わざわざそこでパソコンを使おうとするのかね……?

 これはまだ友達にも聞けていない疑問です。うん、あの大学、やっぱり何か居たんだな。きっと。

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