仕事帰りの食欲
青日 空
ラーメン屋
数時間の残業を終え、もうすっかり暗くなってしまった帰り道を私は歩いていた。
スマホに表示された時間は10時を過ぎており、私の胃はエネルギーを欲して鳴り響いている。
「お腹すいた」
いち早く帰宅し、胃に幸せを詰め込みたい一心で足を動かす。
労働の疲れか動かすたびに足の内側から痛む。
そんな中、ふとラーメン屋が私の目に止まった。
熱々のラーメンを欲して鳴り響く腹の音。
私の足は自然とラーメン屋へと向きを変えた。
「待て私!」
今ここでラーメン屋に入ろう物なら家にある賞味期限ギリギリの食材達どうなる!。
ラーメン屋に吸い寄せられる足を自宅へと向かせ、理性で歩を一歩一歩進ませる。
ラーメンなら家でインスタントのを食べればいい。賞味期限ギリギリの食材達は炒めて上に乗っければいい。そうそれでいい。
そう自分に言い聞かせその場から立ち去ろうすると、ラーメン屋の扉が空いた。
スーツを着たおじさんが腹をさすって満足そうに出てきた。
しかしそこは重要じゃない。
店内に溜まったラーメンの香りが私の鼻を刺激した。
さっきまでの理性を形成していた言葉の全てがガラス板のように砕け散った。
自己と疲れを忘れ、食欲に支配された足はラーメン屋の扉の前まで歩を進めた。
徐ろに財布を取り出し所持金を確認する。
札は入っておらず小銭を全て合わせても699円しか入っていない。
ラーメン一杯の値段は税込み700円。
私の足はコンビニの銀行へと走り出していた。
仕事帰りの食欲 青日 空 @5073725
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます