第17話 Radio Control 1
渡り廊下に出ると、格技場の横にある小さな空き駐車場に、組み立て式のレースサーキットが設置されていた。近寄ってみると、そのコース内を二台のレースカーが猛スピードで疾走している。コースの傍らにはラジコン部と思しき中等部の少年二人と、どう見てもラジコン部には見えない高等部の女の子。彼女と少年の片方がコントローラーを持っている。どうやらこの二人が競争しているらしい。
「あっ、西条の兄貴っ」
僕たちの気配に気が付いたのか、コントローラーを持っていない方の少年はこちらに振り返ると、高揚感を抑えきれない様子で廉太郎の元へと駆け寄ってきた。
「よう。——あいつは今、あの姉ちゃんと勝負中か?」
「そうだよっ、見て。さっき始めたばかりなのに、もう白熱モード」
うぉぉぉぉッという
「ほんまや。随分と気合入っとんな」
…………
少年とは対照的に、女の子の方は口に四角いサンドウィッチ系の総菜パンを
レースが
ゴールを決めた白熱男子は燃え尽きたのか、呆然と立ち尽くして操作をやめると、しばらくして我に返り、
「ちくしょうッ。負けたぁぁぁぁ」
白熱くんがコントローラーを手に地面へとへたり込む。どうやら丁寧な走行をしていたのは彼の方だったらしい。てっきり、僕は彼の方が勝利を収めた豪快なレーサーだと思っていた。
そんな中、先にゴールを決めた少女のレースカーはコツを掴んだとばかりに、依然としてサーキット内を爆走している。心なしか、さっきよりも速度が上がっているような気がした。そしてまた豪快なゴールを決めると、どうやら満足したらしく、彼女のレースカーは徐々にその速度を落とした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます