第2話 Symbolic 2

 それじゃあ、MEPTの説明はこのくらいにしておいて。最後にちょっとだけ、私の身の上話でもさせてもらおうかな。


 ——勘づいているリスナーさんも多くいるから、この場を借りて公言しておくと。私、一善メシアは前世でもアイドル活動をしていました。活動はけっこう順調だったんだけどね。色々あって、文字通りの全身大火傷。世間を少しばかり騒がせたこともありました。


 前世の私は偶像として脆弱ぜいじゃくな存在だったんだ。だからそんなことになってしまった。当然だよね。そもそも、あの頃の私が抱いていたアイドルの理想像自体、典型的なステレオタイプに侵された脆弱なものだったのだから。


 堅牢な偶像であるためには、堅牢な理念を持っていることが大事。


 そうして私は、アイドル界から姿を消すことになった。


 悔しかったよ。他でもない私自身、アイドルに人生を救われた身として。誰かを支えることのできる心強い偶像になることが、ずっと夢だったんだ。一度の失敗で諦められるほど、私のアイドルに対する憧れはヤワじゃない。どうにかリベンジしたいと思った。


 だけど、もはや生身の身体は偶像として欠陥品。整形手術したからあともなくなって、今ではすっかり元通りなんだけどね。それでも、この身体でアイドルを演じることには、私としても抵抗感があった。だから、バ美肉っていうのかな。元から女だけど。私は二次元美少女Vライバーとして生まれ変わることに決めたんだ。


 それはそうとして、みんなは疑問に思うかもしれない。どうして私が宗教団体の元で活動を再開することに決めたのか。個人アイドルとか、もっと堅気かたぎなVライバー事務所で活動する手もあったんじゃないかって。——でもね、それは縁というものなんだよ。


 Vライバーとして活動してみたいと思っていたところに、ちょうどユークロニアからのオファーが来たんだ。そして、この教団の持つ世界観に、私もそれなりの共感を覚えた。理想の偶像を追究するのに都合がいいとも感じた。


 ここってさ、形だけではあるけど。あがめているのはモラルの神様でしょ。身から出た錆だったとはいえ、誰かの悪意によってアイドル界を追放された身としては、活動を再開する場としてピッタリな場所だと思ったんだ。だから、私はユークロニア所属のVとして、アイドル界に再臨することを決めた。ただ、それだけのことなんだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る