Planetary Anima - Symbolic Reality -

夏原識

プロローグ

第1話 Symbolic 1

 おはめしあ、教祖系Vライバーの一善メシアですっ。


 ということでね、今日はみんなに「Moralモラル Enhancementエンハンスメント Promotionプロモーション Townタウン」について紹介していこうと思います。略して「MEPTメプト」。日本語に直せば「モラルエンハンスメント推進都市」ってことになるのかな。——と、その前に。


 今回の動画を見てくれてる人たちの中には、私のことを知らない視聴者さんたちも多いと思うから、ちょっとだけ自己紹介するね。


 私は一善メシア。ユークロニア善行教団、その日本支部で活動しているVライバーです。そして、私の横にふわふわ浮いているのが、マスコットのユーちゃん。私たち教団が崇める、モラルの神様だよ。みんな、よろしくね。


 それじゃあ、さっそく本題に入っていこうか。「モラルエンハンスメント推進都市」。やたら長ったらしい訳語だから、私も「MEPT」って呼ぶことにするけれど。


 MEPTっていうのはね。簡単に言ってみれば、私たちユークロニア善行教団が運営しているゲーテッドコミュニティ。より道徳的になるよう、治療を施された人間のみが暮らすことの許される、柵に囲まれた閉鎖的な街のことだよ。


 治療なんて言うと、よくあるSF映画のような、外科的手術で全身サイボーグみたいなのを思い浮かべるかもしれないけど。そのあたりのことを、今から説明していくね。


 この青いカプセル剤。これが『神の落涙』と呼ばれる道徳能力増強治療薬。慈悲深きユーちゃんが浮世に蔓延はびこる悪意を憂い、流した涙が結晶化したもの。——という設定の、本当は偉大な科学者、それもノーベル医学賞を受賞した人の発明品だよ。これを一粒だけ服用して、二週間の道徳研修を受けてもらう。治療はそれだけ。どう? びっくりした?


 そうなの、外科的治療は一切ないの。


 これがMEPTで暮らすための、たった一つの条件。だから別に、ユークロニアの教義に忠誠を誓えとか、そういうことは一切言わないよ。システム上、都市では『神の落涙』の飲用を儀式的な『洗礼』として扱っているし、それを受けた者も『信徒』と呼ばれることになってはいるんだけどね。聖典やグッズは、興味のある人だけが手に取ればいい。


 私たち教団が信徒に強制するような教義があるとすれば、「国の法律に触れる行為は慎みなさい」ということくらいかな。人々が安心して暮らせる街を作りたい。それがMEPT計画の発端だからね。市民には信心よりも、善人としての行儀を大切にしてもらいたいの。人々の住みよい社会と暮らしが保証された世界こそ、ユークロニアが望む世界だから。


 と、まあ。MEPTについては概ね理解してもらえたかな。もし、もっと詳しいことが知りたいって人がいれば、概要欄に公式リンクを貼っておくから参考にしてね。

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