星を操るものたち〜彼女の書く物語〜

柴田 祐佳 Shibata Yuka

1.始まりの朝

「エリサ、おはよう。今日も天気がいいね」


陽の光がギラギラと照りつけるくらいに、天気が良かった。


暖かいというより、むしろ熱いくらいに。


病室の窓から差し込む陽の光は、室内全体を照りつける。


レースのカーテンが掛けてある大きな窓だが、全開になっており朝日が全体に降り注いでいる。


「アルフ、おはよう。びっくりするくらいの良い天気だね」


そう言いながらエリサはベッドから、ムクッと起きてきた。


アルフは病室の入り口から少し歩いて、エリサの傍までゆっくりと歩いてきた。


「うん、こんな天気は久しぶりだね。ここ最近はずっと崩れてたからね。エリサ、今日の調子はどう?」


そんな事を話しながら、病室の机に置いてある、綺麗な花の水をいつものように入れ替え始めた。


飾ってある花は赤いバラ。それはアルフがエリサの為に買ってきたお花だった。


バレンタインのお返しにと、ホワイトデーの日にもらった花なので、エリサのお気に入り。


しかし花の寿命は短い。綺麗なものの命はなぜこんなにも儚いのか。エリサはいつも疑問に思っていた。


「天気が良いからかな。調子はいつもよりいいかも。気分が上がる感じ。」


エリサはそう言いながら、ニコっと満面の笑みでほほ笑んだ。


「今日も例の小説の続きを書いてるのかい?」


そう言いながらアルフの目線の先にあったのは、エリサの手元に置いてある一冊のノートと左手に持っていた万年筆。


「うん。今日も書いてた。でもここ最近はちょっと筆が止まっちゃってね。今の状態からなかなか先に進めないの」


エリサはややうつむき加減で、深いため息をついていた。


そう、ここ数ヶ月のエリサの体調はイマイチ優れていなかったのだ。


毎日「嫌」と言うほどの検査漬けの中で、医師にも「あまり無理はしないように」と言われたばかりだった。


「誰にだってスランプはあるよね。エリサはさぁ、人一倍考え過ぎるところあるから。たまにはおやすみの日を作ってもいいんじゃない?」


アルフはいつもエリサのことを案じていた。ふたりはいつも一緒だった。


雨の日も風の日も。小さい頃からの腐れ縁で、いまでも双子のような関係。お互いがお互いを案じて生きている。


「ありがとう。でも今日はお天道様が元気を下さったから、ちょっとは筆が進みそうな気がするんだ。だから少し書いてみようと思ってる」

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