第14話

「失礼します。

夜船よふね朝姫あさひです。

平家星へいけぼしくんは、いますか?」


ドクン、ドクン、ドクン。

心臓音が乱れているのが分かる。

会えるかな。あの笑顔、また見れるかな。

それで、「平家星ベテルギウス」について、謝って。それで、仲良くなろうって言いたい。

早く、君に会いたい。

――ねぇ、なんで出てくれないの。

早く、出て。

ねぇ、怖いよ。

少しでいいから、返してよ。

心がほっとするような暖かい言葉でもいい。

息を飲むような、あの美しい笑顔でもいい。

とにかく、なんでもいいから――。

そのあと返ってきたのは、予想だにしない言葉だった。


夜船よふね朝姫あさひ、来るな! 帰れ!」


――え……?

嘘だよね。

ねぇ。

頭が真っ白だ。

なんにも考えられない。

分からない。

どうしたらいいの。

誰か。

ねぇ、なんで。

私の、何がいけなかったの。


「ねぇ、なんで…」

「帰れ!」


君が発したのは「帰れ」、その言葉だけだった。

私は、よろよろとした足取りで自分の部屋に戻ることしか出来なかった。



朝姫あさひちゃん。顔が真っ青だよ。どうしたの?」


病室に帰った途端、朝日奈あさひなさんがそう言って駆け寄ってきてくれた。

そうなんだ。私って今、顔色悪いんだ。

でも、別に顔色が悪かったからってどうなる訳でもないしさ。

だから。ねぇ、なんで。

なんで、拒絶したの――?

私の記憶は、そこで途絶えた。

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