第13話

光が差す。

また、朝が来る。

いつもはこの光が、希望がうざったい。

でも今日は違う。

――平家星へいけぼしくんに、会えるかもしれないから。

君と今日、また話せたらいいな。

光へと手を伸ばす。

でも、何も掴むことは出来なかった。



「おっはよ〜っ!」


いつも元気な朝日奈あさひなさんが、朝の日にも負けないぐらいの明るさで突っ込んできた。

同室の子に申し訳ない…。


「おはようございます!」

「おはよっ! 早速だけど、行く?」


朝日奈あさひなさんが何を言ってるのかはすぐに分かった。

――平家星へいけぼしくんの所に行く?ってことだ。

答えは、勿論――。


「行くっ!」


一択でしょ!

朝日奈あさひなさんも満足したような顔で微笑んだ。


「じゃあ、平家星へいけぼしくんの部屋はここのちょうど下の3221号室だから。頑張ってね!」


ここの、下。

下を見つめる。

ここに、平家星へいけぼしくんがいる。

あと、少しで会える。

その事がわかって、胸が高鳴る。

登ってきた、太陽。

それは、光。それは希望。

あともう少しで、手が届く。


「了解! 行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」


朝日奈あさひなさんの暖かい、太陽のような笑み。

私はこの笑みが大好きだ。



階段を下る。

こんなに元気なのに、あと1年たたない間に宝石になっちゃうだなんて考えられない。

私は、今が楽しい。

生きる意味ってまだ分からないけど、楽しいから

死にたくない。

生きていたい。

この日々が続くことを、私は望む。



「ついたっ…!」


目の前には「3221号室」、そして「平家星へいけぼし」の看板。

――ここに、君が。

あと少し。あと少しで会える。

太陽はもう昇った。

空が照らされる。

――でも、何にも掴めない。

覚悟を決めて、右足を半歩前へ。


「ふーっ……」


妙に緊張する。

でも、別に焦ることでもない。

1呼吸おいて、ノックをする。

そして、言う。


「失礼します。

夜船よふね朝姫あさひです。

平家星へいけぼしくんは、いますか?」

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