第4話 今日の分
♡ ♡ ♡
私の顔を見おろすゼイツ
キ、キスされるの?
と思ったら、そのままソファに押し倒された。覆いかぶさってきたゼイツ准将から、彼のにおいがする。彼は私と手をつないだ。押し倒した私の頭の上に手をあげさせて、腋の下に舌を這わせた。
「やだっ」
驚いて抗おうとすると、ガブッ。首筋に噛みつかれて硬直する。わ、私ニワトリじゃないよ……っ。彼のあたたかな両手が、私の腕の内側を滑りおりてく。脇からウエストへ、腰から太腿へとなぞっていき、彼は私のふとももの内側に歯を当てた。膝に近いところから、何か所も。ちゅっちゅって吸っていく。
「あっ、あっ、くすぐった……」
私は泣き声をあげた。ゼイツ准将の舌がだんだん、私の感じるところに近づいてくる。私は身を反らせて、羽を瞬かせた。
だめ……感じちゃう……
こんなの恥ずかしいのに。こんな関係望んでないのに。パンツの横から潜りこんできた舌に身が震える。急に鼻息が荒くなって、私のそこにむしゃぶりついてきた。
「ひあぁっ!」
彼の肩を押しのけようとした。そんな私の両手をとって、ゼイツ准将はまた手をつないでくる。速い水音がしてくる。舌の動きは凄く激しいのに、手は私の手の甲をゆっくり撫でてくる。ぱんつの中はめちゃくちゃにされて、でもつないだ指は優しくいじられて、わたし、へんになってしまったの。気づいたら「ゼイツさまっ」ってなんども名前を呼んでいて、そのたびに彼が手をぎゅって握ってくれた。私たちずっと互いの指を握り合ってた。
♡ ♡ ♡
ゼイツ准将はガバッと起き上がり、口をぬぐった。
「大丈夫か?」
私は顔を隠すようにうなずいた。
「ベッドへ運んでやる」
そう言うなり、腕を滑りこませて私の体を抱きあげた。私は思わず彼の肩につかまった。心臓が変にドキドキしはじめる。
ベッド、最後までするってことだ……。私、したことないんだけど、その、アレ、入るのかな……?
しかし彼は私をベッドへおろすと、手早くブランケットをかけてくれた。
「ちょっと部屋みてくる。ここで休んでろ」
あ、あれ? 彼はジャケットを羽織って歩いていき、ドアを閉めた。階段をおりていったあと、
「なんだこりゃあ! 物置じゃねーか!」
と聞こえてきた。……四階のゼイツ准将のお部屋、物置状態なのかな。男の子みたいなリアクションしてる。私はベッドで体を丸めて、笑ってしまった。
階下から、どっかんばったん、物音がし始める。ゼイツ准将にとっては、救命えっちも、片付けも、仕事の一環なんだ。たぶんきっと、私の病気のことは誰にも言わないでくれるだろうけど。だって、私ね、見えたの。ジャケットの胸元にしまってある遺言状、実は何も書いてなかった。
私は枕に顔をつっぷした。
お后様がご懐妊されたら、私はフェアリー王国に帰るのよね? ……つまり、最低一か月はこの状態が続くってことよね?
四階の物音がおさまって、会話が聞こえてくる。エリアス様が戻ってきたのだ。
「フェルリナ姫にお電話だって言ってるだろう」
「だーめだ、俺が取り次ぐ」
「何でだよ通せ」
電話? 私は体を起こしてベッドからおりた。ゼイツ准将が電話機をぶら下げて入ってくる。
「Dr.アバウトからだ」
「アバウト先生?」
Dr.アバウト、私の主治医であるお爺さん医師。願ってもない電話だった。私はすずらんの形の受話器に飛びついて、耳を当てた。
「先生? 私、フェルリナです」
『おーフェルリナ~。元気そうじゃな~。声が明るいぞ、なんかいいことでもあったか~?』
「のんきなこと言わないでください先生、私さらわれちゃったんですよ」
ゼイツ准将がドアを閉めた。
『うんうん、聞いとる聞いとる。イークアル公国のお后が世継ぎ欲しさにさらったそうじゃの~。妖精を囚人扱いするなぞ、恐ろしいことを考えつくのう~』
「それで先生、一か月くらいこっちにいなきゃいけないから、薬がほしいです」
『それがの~フェルリナ、残念なお知らせじゃ~。お前さんの薬、作れなくなってしもうた』
「…………え?」
『もう特効薬は作れん~』
「えっ? どうして!?」
『昨日、じじ様のひゃっくりがとまらなくなってのう、100回目のひゃっくりで雪崩が起きて、セイヨク=ウシナウの草畑が全滅じゃ。あ、でもウサギ一匹死ななかったから安心して~』
またおじい様!?!? 私はその場でじだんだを踏んだ。
一日一回シないと死んじゃう病の特効薬は、ウシナウ草がないと作れない。私はそれを毎日摘んできては、命をつないでいたのだ。
「じゃあどうすればいいんですか私~!」
『だぁいじょぶだぁいじょぶ~。探せばその辺に生えてるから~』
「生えてないからあそこの草畑が大事だったんでしょう~!」
てきとーな喋り方のアバウト先生と喋ってると、こっちまで似た話し方になってしまう。
『イークアル公国にいるんじゃろ?』
「そうですよ」
『そっちの方がフェアリーアイランドより生えやすい気候だから、その辺探してごらん~』
「……わかりましたけど。残りの薬剤は送ってくださいますか? お急ぎ便で」
『もう送ったよ~』
電話を切るなり、階下でまたけんか声がしてくる。
「フェルリナ姫に荷物が来たから渡すだけだって!」
「だーめだ、俺が持っていく」
「これは大事なものなんだ! 絶っ対僕が持っていく!」
「いいか、お前は絶対こっから上へあがるな」
「ここは僕の塔だぞ!」
「子供か」
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