第140話 遊び
エイジと恭子とは離れ、栞菜と紗耶香、凛明は遊ぶために2階に上がり、部屋を移動していた。
「わぁ……!すごい……!」
栞菜は部屋を見て歓声を上げる。様々なゲームの数々。見たことのない機材。未知なものばかりを目をしたことで栞菜は既に心を奪われていた。
その光景を見ていた紗耶香と凛明は……複雑な表情をしている。
「……栞菜さんの部屋なんですけどね」
「………紗耶香、それは言わない約束」
その光景を見て、ほんとに記憶が無くなってしまったことに改めて気づいた二人はそれを顔には出さないように、栞菜に話しかける。
「か、栞菜さんは何で遊びたい?」
「……ある程度ならゲームを教えられる」
「ゲーム?」
栞菜が首を傾げている。それを見た凛明は予め用意していた栞菜の愛用していたゲームを持ち出す。
「……こういう機会を使って遊ぶ……やってみる?」
凛明は彼女にゲーム機材を手渡す。持ちながらそのゲームを見ている栞菜は徐々に表情が明るくなり、元気よく頷いた。
「うん!ゲームしたい!」
屈託のない笑みを浮かべ、そう言った。紗耶香と凛明は彼女のその姿を見て微笑みながら、彼女とともに遊んでいくのであった。
◇
彼女達がゲームを遊んで……数時間が経過した。
初めはおどおどしながらゲームをしている栞菜に持っていた知識で教えて楽しんでいいた紗耶香と凛明であったが……。
「ちょ!?うっそでしょ!なんでそんなプレーができるんですか!?」
「?普通にできるよ??」
「無自覚なんですか!?そういうのいらないですよ!?あ、ちょま……!あぁああああ!!!!また負けた!!!!」
「……栞菜、凄く上手……紗耶香、くそ下手野郎」
「うっさいわね!!あんたも人のこと言えないでしょ凛明!?」
「………それは仕方ない……栞菜が強すぎる」
メキメキとゲームの腕を上げていった栞菜に紗耶香と凛明はボロボロにされていた。記憶が無くなっても、そのセンスが無くなったわけではない。元々栞菜のゲームの腕はプロ並ということもあるためであった。
子供だから勝てるでしょ?っと二人は心の隅で思っており、今までゲームに負け続けた鬱憤を晴らそうとしたが……どうやら現実は甘くないらしい。
「ムカぁああああ!!!なんだか苛ついてきた!凛明勝負しなさい!絶対に狩ってやるんだから!!」
「……ふっ、紗耶香が私に勝とうだなんて、百年……いや、千年早い」
鼻で笑いながらも、紗耶香との対戦を受ける凛明。二人は完全に栞菜のことを忘れてしまい、ただゲームで勝つことだけを考えていた。
完全に蚊帳の外になってしまった栞菜は二人のゲームをしている間、周りにある見たことのない機材を眺めていた。
(……あれ?)
すると、彼女の視界にあるものが目に入った。栞菜は二人に気づかれないように立ち上がり、それに近づく。
「……パソコン?」
それは、嘗て栞菜が愛用していた編集用のパソコン……配信をする彼女にとって切っても切り離せない存在であった。
栞菜はそのパソコンに触れて、電源を起動する。パスワードが必要だが……身体が覚えているのか、栞菜は頭に思い浮かんだパスワードを打って、解除していく。
「……あれ?なんで私が映ってるの?」
画面を開くとそこには、紛れもない自分の姿があった。切り抜きと呼ばれる自身の動画、ライブ配信など……様々な動画が彼女の目に映っていた。
「……配信、しなきゃ」
咄嗟に出た言葉。栞菜は本能に従ってパソコンに触れようとして……。
「……栞菜さん?」
声が聞こえ、その手を止めてしまう。栞菜は振り返ると、そこにはゲームを止めて唖然とした表情でこちらを見ている二人の姿が見えた。
「……あれ?なにしてたんだろ、私」
「………栞菜。もしかして記憶……なにか思い出したことがあるの?」
凛明がそう聞いてくるが、栞菜は分からなさそうに首を傾げる。一体自分が何をしようとしていたのか分からない。先程の配信とは……正気に戻った栞菜には何も分からなかった。
「……さやかちゃん?」
「……え?あ、ごめんね。ちょっと席外しますね」
目元を拭きながら、部屋から出ていく紗耶香。彼女が去っていった部屋は……どこか殺伐とした空気が残っていた。
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