第133話 悲劇
「ど、どういうこと……?お母さんとお父さんが見つかったって……」
ふらふらと歩きながら栞菜さんはその恭子さんという人の両肩を鷲掴みにする。いつもの彼女とは思えない……ただ、たまに目にする悪夢を見ている時の幼い栞菜さんと雰囲気が告示していた。
「落ち着いて栞菜。まずは深呼吸を」
「お、落ち着いてなんかいられないよ!お母さんが……!お父さんが……!みつか、見つかったって……はぁ、はぁ、はぁ……」
「か、栞菜さん…!」
過呼吸気味になっている彼女の駆け寄り、彼女の背中をゆっくりと擦る。それでもパニックになってるのか、彼女の動悸も激しいように見える。
「……貴方は……いえ、今はそれよりも栞菜を連れてくわ。栞菜を乗せて頂戴」
近くに停めてあった赤い車の音が聞こえる。俺その恭子さんという人に頷きながら、栞菜さんと一緒に彼女の車に乗った。
「栞菜さん。大丈夫ですからね。まずは落ち着いて、深呼吸をしましょう」
「はっ、はぁ、はぁ……!え、エイジさん……ふぅ、ふぅ……!」
……やっぱり過去に何かあったのか。それを聞きたいこと所だけど……今はそんなことよりもだ。
恭子さんが運転席に乗り、エンジンがかかる音が聞こえた。栞菜さんを落ち着かせながら、紗耶香のスマホに遅くなるという連絡を入れるのであった。
◇
恭子さんの車が停止する音が聞こえた。
そこは……警察署であった。
「ッ!?栞菜さん!!」
着いた瞬間、彼女は車から降りて猛スピードで警察署へと向かっていった。運動音痴だとは思えない速さで、彼女の必死さが際立っていた。
「……私達も追いましょう。事情は落ち着いたら話すから」
恭子さんの言葉に疑問と、嫌な予感を感じつつも栞菜さんが開けたドアから外にでて、早歩きで向かっていく。
途中、警察の人に事情を説明されたが、栞菜さんのことを伝えるととても悲しそうな表情をしてから案内してくれた。
空気は殺伐としており、少なくともそれはいいことではないのがよく理解できた。そして、一つの扉が開けっ放しになっているのが見えた。
案内してくれた警察官の人が頷き、恭子さんと俺はその扉の中へと入っていく。
中には………白い布を被せられた二つの遺体に、それを呆然と立ち尽くして見ている栞菜さんの姿があった。
「……おとう、さん?おかあ、さん?」
その声はとても弱々しく、触れたらいつでも壊れそうなか細い声。栞菜さんは震えながら顔に掛かってある布を外して……露わとなったその遺体の顔を見て、持っていた布を落としてしまった。
「う、嘘だよね?だって、だって戻って来るって言ったもん……そんなこと」
きっと何かの間違いだ。栞菜さんはもう一人の布を外し……男性の遺体を見て表情が消えた。
「……うそだぁ……うそだよぉ……そんなこと、ない……そんなことないもん……」
だが、そんな彼女に声を掛けられる者などいない。それがまた栞菜さんの心を尽く砕いていった。
「ねぇ、起きてよ……ほら私、栞菜だよ?成長してびっくりしちゃったんでしょ?私、頑張って生きたよ?お母さんとお父さんのこと待ってて……絶対帰って来るって……しんじ、て……」
ポロポロと彼女の上から雫が溢れ始める。そして理解してしまったのだ……栞菜さんの親はもう、この世にはいないことを。
「あ、アぁ……アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
栞菜さんの悲痛な叫び声が部屋に響き渡る。お父さん、お母さんと縋っているその姿を、俺は見ることが出来なかった。
「ッ!?栞菜!!」
だが、その叫び声も突然消えることとなる。
栞菜さんが力なく倒れてしまったからだ。彼女が倒れたことで周りは大惨事。だが、そんな中でも……俺は何も出来なかった。
(……栞菜さん)
ただ、心の中で彼女の名前を呼ぶことしか。
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