第129話 筋肉か、豆知識か


「………来てみたんだが」


……なんか久しぶりに見た気がする。リゲルさんと蓮さん。

会社に来てみると、二人の姿が見えたので声を掛けたところ配信があるから着いてきてくれと言われた。


どうやら重要な話があるらしく、その剣幕に負けて俺は二人の元に来たのだ。


「おう、社長さん来たのか。とりあえず座ってくれ」


「は、はぁ……」


リゲルさんってこんな物静かだっけ?もっと騒がしいイメージだったような……。

そんかことを思いながら、俺は空いている椅子に座っていく。

蓮さんも俺のことをじっと見てるし……なんだかいつもの二人と違って違和感がある。


「あの、お話とは?あと俺は社長ではありませんよ?」


「だけど、咲凜からは君が偉い人だって言ってたよ?あと芦田兄妹もね」


「……何言ってるんだあの人たちは?」


咲凜さんは……まぁ仕方ないとして、あいつらは一体何をほざいてるんだ?

一応お前らがここを引っ張っていくって話だよな?変に俺を偉い人扱いしないで欲しいのだが……。


「今日、そのなんだ……社長さんに……」


「……裕介で構いませんよ?」


「……悪いな。敬語はちょっと慣れなくてな。それで、裕介に聞きたいことがあってきょうここに呼んだんだ。主に配信について」


「配信、ですか?」


それを聞き、俺は少しだけ背筋を伸ばす。

この前の紗耶香ちゃんのこともある。もしかしたら深刻な問題なのかもしれない……そんなことを思いながら話を聞くと、リゲルさんは口を動かす。


「実はな。今日こいつと俺でコラボ配信をしたいと思ったんだ」


「はい」


「そんでもって、何をしようか悩んでてな……筋肉の素晴らしさについて語ろうか、それともこいつのつまらない豆知識を語ろうか」


「はいはい……ん?」


「こいつと話しても全く纏まらなくてな。折角だからあんたに聞こうと思ったんだ。それで……どっちがいいと思う?」


「……それ、重要ですか?」


聞き返してしまった。いや確かにある程度は大事なのだろうが……なんというかそこまで悩むことなのか?


「無理もありませんよ。僕らのことをあまり知らない裕介さんがそう反応するのも。ですがとても重要なことなんです」


そ、そういうものなのか?

いや確かに、この人たちのコラボ配信って大体豆知識か筋肉についてなんだよな。

それがある一定の層にハマって人気が出てるんだけど……。


「なぁ、どうすればいいと思う?喧嘩ばっかりするのもよくないと思うか決めきれなくてな……」


「ぜひお話を聞きたいです。裕介さんの意見を」


筋肉か、豆知識か……。


「……あの、それって両方やってはいけないんですか?」


思わず聞いてしまった。いやだってそんな極端にこれだってやるなら両方やった方がいいのでは……?


「まぁでも少し特別性は持たせた方がいいかもしれませんね。例えば筋肉の豆知識とか。ほら、よく耳にする火事場のバカ力っていうのは実際にあるとか……」


そんなことを話していると……目を見開いてこちらを凝視している二人がいた。


「お前……」


「は、はい?」


「もしかして……天才か?」


「……はい?」


い、いや一回でもやるだろ?リゲルさんの言葉を聞いて思わず目をパチパチと瞬きしている間に、蓮さんが何かをぶつぶつと話している。


「確かに筋肉についての必要な知識を入れるのはいいかもしれませんね。体重1kに当たってタンパク質に必要な質量とか、600の筋肉があるとか………」ブツブツ


「……そうと決まったら準備するしかねぇ!サンキュー裕介!助かったわ!」


そう言って、リゲルさんは今もブツブツと呟いている蓮さんを連れて部屋から出て行った。


「………なんか、あの人たちって色々と抜けてるな」


もしかしてだけど、それも魅力に惹かれたとか……?

そんなことを考えながら俺はしばらく扉の方をじっと見てるのであった。





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