第七章
第128話 いつもの日常
「……ん」
朝か……いや、まだ5時なんだけどなぁ。
心の中で独り言を溢しながら、俺は布団を退かして起きる。
「うぅ……寒い」
冬の時期なのか、布団の中から出た瞬間とてつもない寒さが俺を襲ってきた。
ほんとならもっと布団の中に入っていたい……でも、そんな弱音を吐くわけには行かずに俺は扉を開ける。
「……ん。エイジおはよう。今日は待っていた」
「おはよう凛明。よく寒いのに廊下で待っていられたな」
そこには、俺を待っていたであろう凛明の姿があった。学校については、栞菜さんと紗耶香を説得して、中退した。
「もっと凛明と登校したかった〜」と紗耶香は言っていたが、彼女はそんなもの知らんと一蹴した。
「……学校行ってからやれなかった朝のレッスンをやる。エイジのリハビリも兼ねて付き合ってもらう」
「分かった。なら少し待っててくれ。準備だけしてくるよ」
「……ん。それなら私もエイジの部屋に入る」
「いや着替えるからな?流石に着替えられる所を見られるのは恥ずかしいぞ」
「……大丈夫。私は何も問題ない。寧ろバッチこい」
「はいはい。そんな戯言言ってないでリビングに行って待ってなさい」
彼女を持ち上げて俺は扉を閉めた。前の凛明ってあんなこと言ってたっけ?
そんなことを思いながらも、俺はパジャマを脱いで、運動用の服をさっさと着てからリビングで待っている凛明のところに向かうのであった。
◇
「……ん。お疲れ様。今日はここまで」
「あぁ、お疲れ。ふぅ……疲れたな」
久しぶりに外でランニングしたが、さっぱりするな。まぁその後風呂に入らないといけないけど……。
俺は事前に持っていた水を飲みながら玄関のドアを開けた。
「あ、二人ともおかえりなさい」
すると、エプロン姿の紗耶香の姿があった。
いつもと違う姿に最初は少し驚いているが、今ではそれを見る機会が多くなっている。
「……ただいま。ご飯は?」
「まだ出来てないよ……栞菜さんと一緒に作ってるからね」
「…………今日はいいや」
「ちょっと凛明。流石に失礼だよ」
逃げようとする凛明の首を掴み、逃がさないように紗耶香。まぁ不安な気持ちはわかる。栞菜さんのあれは……。
最近、俺がいなくなったことで3人の中で何かが変わったのか、自分たちで家事をするようになったのだ。
まぁ栞菜さんが家事をする姿には未だに想像できないが……紗耶香と凛明が家事をする姿は意外と様になっているのでびっくりした。
もしかしてはるちゃんが教えてるのか……?改めて凄いなあの子。
「紗耶香〜!少し手伝って〜!これどうすればいいの〜!?」
すると、栞菜さんの声が聞こえてきた。
凛明はそのまま風呂に向かって行き、俺も紗耶香とともに栞菜さんの様子を見ていると……うわぁ。
「……エイジさん。気持ちは分かりますが、それは本人の前で出さないでくださいね」
「わ、分かってる……」
目の前のその……ゲテモノ料理を見て俺は顔を顰める。
これは……なんだ?魚丸ごと入ってないか?それに鍋の中にマヨネーズ入れて……汁の色も何故か黒いような……。
「あ!エイジさん!おかえりなさい!今鍋料理を作ってますから待っててくださいね。味見でもしてみますか?」
「……で、出来たら食べます」
俺を見て子供のようにはしゃいで喜ぶ彼女を見てどう答えれば分からずにそう答えてしまう。
……これ、どうすればいいんだ?味は美味しいのか……?
「ていうか栞菜さん。私と一緒に作りましたよね?なんでこう、汁の色が変色してるんですか?」
「?初心者はとりあえず色んなものを放り込んでれば美味しいって書いてあったわよ?それに、料理は愛情が全てって知ったわ!」
「いや限度があるでしょ限度が……」
栞菜さんの言葉に対して、どこか呆れを感じている紗耶香の姿が映る。
(……やっぱり栞菜さんに家事を任せるのは場違いだったのか……?)
でもそうしたら栞菜さん、絶対拗ねるだろうし……。
そんなことを考えてると、じー……と扉の前で俺たちの様子を見ている凛明の姿が映った。
「…………ご飯は遠慮しておく。じゃっ」
「ちょっと待とうか」
「……離してエイジ。今私は猛烈に命の危機を感じている。ここは逃げるべき」
「そんなことしたら栞菜さん泣いちゃうからな。まだお風呂沸かしてないんだろ?だったら先にご飯食おうな。今日は休みだから身体壊してもなんとでもなるよ」
「……うぅ……エイジの裏切りものぉ……」
流石に3人でこれを食べ切れる気はしないからね。
そうしてしばらく経ち、栞菜さんのゲテモノ鍋……闇鍋ができて、俺たちはそれを食べるのであった。
味は……想像に任せるよ。
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