第125話 真反対な二人


「「エイジ(さん)!!」」


「うぐっ……!?」


連絡を受けて急いで病院に来たと思われる紗耶香と凛明が俺の身体に飛びついてきた。

はるちゃんは今は自分の家に戻っているため、この場にはいない。


「もう!また心配させるような真似して!お願いですからもう無茶はしない手間くださいよ!!」


「……エイジのバカ……バカ……バカ……!」


「わ、悪い……心配かけた」


痛みを感じながらも、泣き気味な二人に答える。


「栞菜さんは?」


そう聞くと、紗耶香は俺から離れて事情を説明し出す。


「その、今は外に出かけられるような状態じゃなかったんです……呼びに行った時は熟睡していて……」


「……そっか」


あの人にも心配させちゃったな。あとで連絡しないと……でも今は。


「凛明、あの後怪我はなかったか?ご飯ちゃんと食べられたか?」


「………うん………私は大丈夫……ご飯は真中たちが作ってくれた……それに結奈が私たちの家掃除してくれて………」


何か言い合える前に凛明の口が閉じてしまった。そのまま俺の身体を抱きしめながら……。


「……ごめんなさい」


しゃくり声をあげながら謝ってきた。

なんで、と思うが……自分が誘拐されたから俺が入院したと思ってるだろう。


「凛明」


「ッ!……ご、ごめんなさ!」

「謝らなくていい」


また謝りそうになったから、彼女が言い終える前に、再び頭に手を置く。


「凛明が無事でよかった」


「ッ!エイジ……う、うぅ……うぅ……!」


ついに事切れたかのように凛明は声を殺して泣いてしまった。

泣き虫さんだなと思いながらも、俺はゆさゆさと彼女の華奢な頭を撫で続ける。


「身体の方は大丈夫なんですか?何か後遺症とかも」


「うん。お医者さんから詳しい話をされたけど特に問題ないらしいよ。リハビリをしたら退院もできるみたい」


「そうですか……よかった」


安心しきったのか、紗耶香はほっと息を吐いた。

まぁでも数日の間、家の事は宗治達に頼りっぱなしになりそうだ。というか思ったけどいつも間に結奈ちゃんも家のこと知ってたんだ……?


退院したら一言お礼でと言わないとな……というか思い出した、母さんたちのことだ。


あの人たち、特に母さんのことだが、俺が入院したにもかかわらず「まぁ雄介なら大丈夫よ」と心配しないで笑っていたらしいのだ。

父さんの方は心配してたらしいけど……。


こっちは意識不明になったんだぞ?実の息子のことが心配じゃないのかよ……。


「栞菜さんからは私から連絡しておきます。エイジさんは身体の回復に専念してくださいね」


「あぁ。そうさせてもらうよ。色々とごめんな、負担掛けさせるような真似をして」


「いえ。そんな事ありません。いつもエイジさんに頼りっぱなしですから、これくらいはしませんと。でも……ほんとに……よかったです」


紗耶香は俺に微笑んでから、栞菜さんに連絡しに行ったのだろうか、病室から出ていった。


なんだか少しだけ紗耶香が成長したような気がする。前なら少し不安定になると思ってたのに……娘の成長を見ているようで嬉しくなる。


「凛明。そろそろ落ち着いただろ?もう離れてくれ、少し痛い」


「……もう少しだけ……」


「……」


対する凛明は……だんだんと甘えていってる気がする。

なんだか真反対だなぁ……と思いながら、彼女が泣き止むまで彼女の頭を撫でるのであった。





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