第121話 最悪な結果
「凛明ちゃん!もう少し、もう少しだから待ってて……!今、外すから!」
「……はる、か。もういい……私のことは……火が、回ってきてる」
「なに言ってるの!見捨てれるわけないじゃない!そんなこと言ってる暇あるなら動かないで!」
「うっ……」
いつもの強気な春香に押され、凛明は押し黙ってしまう。
彼女は中々切断しきれない手錠の鎖を切断しようと奮闘していた。
だが、元々手錠が頑丈なものであることや、彼女が非力であることなど、様々な要因が重なり中々外せずにいた。
(……外は、なにが起こってるの?急に……爆発が起きて……火が回って……煙も入ってきてる……)
「くぅっ!あの人、一体どんな方法使ったらこんなかったい手錠手に入れたの!?ていうか普通手錠って簡単に手に入らないよね!?」
「……ッ!はる、か……逃げて」
「えっ?……!?」
入り口のところに誰かが入ってきた。誰が入ってきたかは分からない。
だが、少なくとも自分たちにとって都合が悪い。そう思っていたのだが……。
その人物が彼女たちの姿を確認すると、急いで駆け寄ってきた。
「凛明!!」
「ッ!エイジ……!!」
凛明は表情が明るくなり、春香は俺のことを驚愕したかのように凝視していた。
「凛明!待ってろ、今助けてやるからな!」
エイジは自身の手元に持っていたその鍵を手錠の中に差し込んだ。
すると、頑丈な手錠が嘘のように凛明の手首から外れていった。
「外れた……」
「……やっぱり、あの子が予め渡してくれてたのか」
先ほどエイジと会っていた圭介が手錠の鍵を渡していたのだ。
「ゆ、雄介さん……なんで……?」
春香が呆気に取られる反応をしてエイジに聞くが、彼は当たり前のように答える。
「子供が助けようとしてるのに、見捨てるわけにはいかないよ」
「ッ!……また、そうやって貴方は……」
「……凛明、立てるか?今この建物に火が回ってきている。急いで離れるぞ」
「………うん……あ」
凛明は立とうとして、バランスが崩れ始める。俺は彼女が倒れる前に手で支える。
「……ごめん……力が出ない」
「……いや、大丈夫。これくらいなら」
どんな生活送ってきたかは分からないが無理ない。おそらく十分に食事をしてこなかったのか。
「雄介さん!私が先導しますので、凛明ちゃんのことをお願いします!」
「……分かった。なら早く……」
「なに勝手に出ようとしてるのよ?」
『ッ!?』
入り口から声がした。目の前には、少しだけ黒い炭のような跡が身体中についている高校生の姿があった。
「パリ、ピ……!」
「ははっ!様子見てきたらすぐこれなんだからさ!ほんっっとにムカつくことしかしないわよねあんたたちは!!あのバカは裏切るし……あぁもう!どうしてこんな上手くいかないわけ!?」
癇癪を起こし、足をガンガンッ!と踏みつけているパリピ。だが次第に彼女は薄ら笑いを浮かべていた。
「……ここまで騒動を大きく起こしたら、警察も来るだろうし、私のことも洗いざらい世間に公表される。ははは!全部台無しよ!でも、ただじゃ終わらないわよ……あんたたちも道連れにしてあげる」
隠し持っていたのか、懐から鋭利な包丁を凛明と春香に向けられる。
それを見たエイジは顔を青ざめながらも凛明を置いてから咄嗟に動いた。
「エイジ……!?」
「まずはメガネ!お前からよ!!」
「ッ!」
狂ったように笑いながらパリピは包丁を春香に向けながら、突進をする。
今にもその包丁が春香の身体に突き刺さろうとした時……入れ替わるように春香は吹き飛ばされ、代わりにその人の身体が、パリピに突き刺された。
「っ………がはっ」
「……ぇ?」
「はっ?」
誰もが絶句した。息すらもしていないのではないかと思われるくらいに。一人を除いて。
「…………うっ………」
「ッ!?な、なによ……なんなのよ!!」
パリピは刺されても尚、自分を睨む彼に怖気付いて、ナイフから手を離してその場から逃げるように去っていった。
「……なん、で?」
「……り、あ……はるかちゃんは、無事、か?あと、ごめんな」
最後に力無く笑みを浮かべて彼は……エイジは言い放った。
「……救急車も、呼んでおいてくれ」
そう言って、エイジは力無く倒れていった。
「………………えい、じ?」
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