第118話 恐れていた事
「どう?こんな薄汚い場所でのお目覚めは?いい気分を味わえたかしら?」
「……最悪な気分」
たった一言だけ、凛明はそれだけしか呟かないが、満足したのか目の前にいるパリピは表情を歪ませる。
「いややっぱいいわ。大っ嫌いな奴が嫌がっている姿、私好きなんだよね〜」
「……人として終わってるからやめといた方がいい。趣味が悪すぎる」
「はいはい、いい子ぶるのはやめようね〜歌姫ちゃん」
キャハッと嘲笑うように見下している彼女に対して、凛明は底知れぬ怒りを覚える。
「……おい、俺はどうすればいいんだ?もう帰っていいのか?」
「あー……うん。あんたもう用ないから、さっさと帰って。さよなら」
「……相変わらず人使いの荒い野郎だ」
圭介は立ち上がり、パリピの横を通り過ぎて出ていくところで、最後に凛明の事を見る。
「じゃあな歌姫。せめてお前が無事なのを祈ってるぜ」
「………余計なお世話……最後まで人の言いなりの貴方に心配されるほど、私はやわじゃない………」
「………チッ」
舌打ちだけして、圭介はその薄汚い倉庫から出ていった。
それを見たパリピは鼻で笑う。
「あんな態度取ってる癖に本人は裏の奴らと全く無縁なのが笑えるのよね〜知ってた?あいつ、普通の学生なのよ?笑えるのね〜」
「………そんな事、どうでもいい。こんな真似をしてただで済むと思ってるの?」
圭介のことなど眼中にないと一蹴し、脅すように言うが、パリピは特に気にした様子はなく。
「あぁ、別に平気よ。だって私捕まることなんてないし」
「………どういうこと?」
「知ってるよね?私、色んな裏社会の人と繋がってるの。分かりやすいところだとヤクザさんとか?」
「……もしかして」
弱みを握ってるのか?そう言おうとするが、その答えは彼女の答えから出される。
「そうそう。だからね、協力してもらってるのよ。たとえば警察に圧力かけてたり、今この場所を見回ったりね」
「……………………そんな女がパパ活みたいなことしてるの……意味わからない」
強気で言うが、彼女から冷や汗が流れてくる。
このままでは自分は誰かに見つかることも叶わず、一生囚われの身になってしまう。
まさにこの状況を絶体絶命と言う他なかった。
「あはっ、気がついた?確かこれって……詰みってやつだっけ?」
「……何が目的?」
数日前とは立場が逆転しても尚、あくまで強気な態度は消さない。
凛明が聞くと、パリピはいつもの調子で彼女に目的を話す。
「いやね、前のこと覚えてるでしょ?凄い腹立ったわ〜あのメガネ然り、あんた然り……だからね、仕返しよ」
「…………仕返し?」
「そう、仕返し。もうあんた達が二度と私に歯向かえないように教育するのよ。どれだけ時間をかけてもね。あはっ♪今更謝ったって遅いからね?本気で私を怒らしちゃったんだから」
「待って……私たち?」
狂ったパリピの様子よりも気になる言葉があった。それは、彼女にとって一番想定したくないことで……。
「あ、気がついちゃった?ほんとは感動の再会とかさせて欲しかったんだけどなぁ……まぁ仕方ないか」
「……やめて」
彼女の頭の中である可能性が過った。来るはずがない。いや来ないでくれ。凛明はそう願ったが……。
「……凛明ちゃん!!!」
「ッ!?」
あぁ……来てしまった。
自分が傷つくだけならまだ耐えられる。でも……自分の友人である彼女を巻き込みたくなかった。
「へぇ……来てくれたんだ。やっぱり度胸あるね。流石友達想いの優しい女の子」
「………春香…………!」
「助けに、きたよ……凛明ちゃん!」
目の前には、自身の友達である強い意志を宿した目をしている春香がいた。
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