第117話 誘拐
「……さん!……………エイジさん!!」
「……うっ……か、栞菜さん……?」
意識が朦朧としている中、栞菜さんの声が聞こえてくる。
俺はなんとか重くなった瞼を開ける。
「エイジさん!よかった……目が覚めなかったから心配したんですよ」
「……寝てた?」
まだ記憶がはっきりとしておらず寝ぼけたようにそう言うが……時間が経つにつれて徐々に思い出す。
「………ッ!?」
そして……それは春香ちゃんのことも例外じゃなかった。
「栞菜さん!警察!すぐに警察に連絡してください!!」
「え、えぇ!?突然どうしたんですエイジさん!?」
俺は椅子から立ち上がり、急いでリビングから出ようとして……机に置いてあったスマホの電源をつけて、それを見る。
「え、エイジさん。それは?」
「……ここに、凛明がいると思われます」
「えっ!?」
マップということで分かりやすくなっており……それを自分のスマホで写真を撮る。
「栞菜さん!この情報を警察に!俺は、ここに行きます!」
「ッ!え、エイジさん!?待ってください
危険です!!」
俺を静止する声が聞こえてくるが、それに答える余裕はなかった。
(……凛明!……春香ちゃん!)
二人の元に行くために……俺は全速力で走っていった。
◇
「………ん………ここ、は?」
意識を取り戻し、目を見開くとそこは見覚えのない場所……なんだかどこかの倉庫だろうか?物がいっぱい置いており、不気味だ。
「……よぉ、目が覚めたかよ」
「………誰?」
声が聞こえた方に振り向く。するとそこには見覚えのある金髪頭が……。
「………誰?」
「……てめぇ……ぶん殴るぞ、いい加減」
……否。どうやら凛明の記憶には彼の記憶はないようだ。
金髪男……圭介は凛明の態度にイラつくも彼女の隣に座りこむ。
「随分とひでぇありさまじゃねぇか。見ていて清々するぜ」
「……何の用?私、貴方に用なんかない。早く消えて」
「……相変わらずの口の悪さだなぁおい。まぁいいさ」
そうして再び静寂が訪れる。元々仲がいいわけでもないため、二人が会話する時はいつも数十秒の間が存在した。
「……貴方が言ったこと、違った……春香は悪い人じゃない。貴方の勘違い」
「……は、そうかよ。だが俺が言ったのはあいつにも秘密があるってことだ。悪人だなんて一言も言っちゃいねぇ、まぁだが、奴は違ったようだがな」
「……パリピのこと?」
手錠が自身の手首にくっついており、動けないことを知りながらも、彼に聞く。
「……奴と繋がってるのは学校だけじゃねぇ。この社会の裏と言われている奴らも繋がっている……そこらのヤンキーや、ヤクザともな」
「……貴方もあいつの一員ってこと?」
「……さぁな。だが、あの女を敵にしちゃいけねぇのは事実だろ」
「………貴方って、見た目が怖い割に意外と臆病………見栄だけ張って、弱い人」
「んだと?」
凛明の言葉を挑発だと認識したのか、圭介の鋭い目つきが凛明に向けられる。
対する彼女も、元々話したくない相手との対話や自信のいる場所が分からないストレスにより、自然と目つきも鋭くなる。
そんな剣幕の中、奥から誰かがこちらに近づくようにトントンっと床を叩く音が聞こえてくる。
「……あれ?歌姫ちゃん起きてたの?ちょっと圭介、起きてるなら連絡しなさいよ」
「……チッ、来やがったな派手女」
「はぁ?何よその反応。人のこと言う前に自分のこと見直したらどうなのよ、ヤンキー?」
「……お前」
凛明の表情が険しくなる。おそらく一番会いたくなかったであろう人物が目の前にいるのだから。
「おっひさ〜歌姫〜数日ぶりだね〜元気してた?」
「……しつこいって言われない、貴方?」
——パリピという悪女が。
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