第113話 これ、どうなってもいいの?
「……バイト?春香が?」
ただのバイトなら凛明も驚くことがなかったが、それが風俗関連で出てくるとは思わず、聞き返してしまう。
「そうそう。こいつ一体何を思ったのか、隠れて働いてたらしいのよ。バイトなんて色々あるのにね」
そう言いながら、片手に持っているスマホで何かを見せる様にしてくる。
そこには、あのドレスの様な格好ではないにしろ、スーツを着て働いている春香の写真があった。
「まぁガールズバーってやつ?なんかキャバクラとかそこらへんは働いてなかったらしいわ。にしても、ほんとに気持ち悪いわねぇ〜これ」
「ッ!?」
まるで汚物でも見るような目でパリピは春香のことを見る。
それに対して春香は身体を震わせたまま、話し出す。
「……お金が、なかったの。昔から借金抱えて……お母さんとお父さんも頑張って働いてたけど身体壊しちゃって……だからなんとか働けるところを……」
「それでそーいう仕事を選ぶのもどうかと思いまーす」
「……うるさい。お前は少し黙れ」
「ひぇ〜歌姫様は怖い怖い」
まるで煽ってるのか、挙手をして発言してくるパリピを黙らせる凛明だが、それでもダメージはないらしい。
「……それで、学校には隠れてなんとかお母さんとツテで働かせてもらったの」
「……それが……その店?」
春香はコクリと頷く。
「……そう……春香」
「ッ!……ご、ごめんね凛明ちゃん。やっぱりキモイよね?こんな仕事してたなんて」
「……違う……話してくれてありがとう。春香の秘密、言ってくれて嬉しかった」
「……え?」
彼女の言葉に春香は唖然としながらも、凛明はパリピの方に顔を向ける。
「……ガールズバーは別に風俗じゃない。それに、春香はやむを得なく働いていた……私は春香のこと、それでキモいとか思わない」
「り、凛明ちゃん……」
「ふーん……そう答えるんだ。やっぱキモいねあんた。そういうところ、まじで意味わかんないんですけど」
「……私は、私の言いたいことを言ってるだけ……人を貶すお前のほうが人としてどうかと思う」
お互いの主張を言いあう二人に対して、春香は黙って見守る。いや、声を出すことが出来なかった。
自分が秘密を隠しているのにも関わらず、凛明はそれを信じてくれた。
その事実に春香は、なにも言うことが出来なかったのだ。
「……まぁ別になんとでも言いなさいよ。あんたがどう言おうと別に構わないわ」
そう言って、パリピはスマホの電源を消して、表情を歪める。
「じゃあこれ。バラすから。学校中に」
「……正気?」
「正気もなにも、こいつが約束を破るからいけないのよ。ネットなら擁護する人が多くなるかもしれないからともかく、学校ならどうかしら?」
パリピは学校全体の弱みを握っている。
その事実は二人も周知の事実だと認識しており……それが彼女の恐ろしさを際立たせていた。
「いいわよね〜だって貴方から裏切ったんだもの。それなら仕方ないわよね〜約束なんだもん」
キャハハっと彼女の笑い声が教室全体に響き渡る。
「……こ、こんな学校……」
「あ?なに?」
「こんな学校……私からやめてやる!!!」
春香が思い切った発言がパリピの笑い声を覆い尽くした。
それには二人も目を見開き……。
「……は、春香?」
「弱みだとか裏だとか……そんな学校で学ぶなんてこっちからごめんです!それに、私借金しちゃってますし!!将来やりたいこととかなかったし……もうとにかくこんな生活ごめんです!!」
そういいながら、春香は凛明の顔を見る。
「…ありがとう凛明ちゃん。私のためにここまでしてくれて……すっごく嬉しかった」
「……春香」
「……なので、別にそれを広めてもらっても構いません。私は……私の道を進みます!!」
「……はぁ……なにそれ?」
静かだが、ドスの利いたパリピの声。そこには確かな怒りがあった。
「もういいわよそんなに辞めたいなら……辞めさせてあげるわ」
もう彼女の目に嘲笑うというものなどない。
パリピはそのまま教室から出ていこうとして……。
「……本当にいいの?」
――凛明の声が不思議と彼女の頭に響き渡った。
「……なによ。邪魔しない……で」
振り返り言葉を発しようとするが、出来ずにいた。
そこには……写真を見せびらかすようにこちらに見せていた凛明の姿が合ったのだから。
「……これ、どうなっても」
嘲笑うように見下しながら。
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