第110話 相談
「……んん?」
数日が経ち、ようやく全てのテストが終わりを迎えた。
それ自体は嬉しいのだが……凛明には少し悩みがあった。
「……春香に最近避けられてる気がする」
あの日、パリピから何か声をかけられた時から春香は何かと理由をつけては凛明のことを避け続けていたのだ。
話しかけようとしても「ごめんね凛明ちゃん……」とだけ言ってそのまま立ち去る始末。
特に嫌なことはしていない……はずだと、断然することができないことを考えるとやはり不安なのであろう。
「……ということで、エイジ。私はどうすればいい?」
「……そう言われてもなぁ」
それに対して俺は、何も言えずにいた。
何か力になってあげたいのは山々だけどなぁ……。
確かに急にそれはおかしいけど、無闇に春香ちゃんのことを探るのはよくないし……。
「一度、本人に聞いてみればいいんじゃないかな?」
「……やっぱり?」
そう言うと、凛明ほ表情がまた暗くなる。
「……タイミングがない……それに、少し怖い」
……まぁ、そう思うのも仕方ないか。
初めての友達だから安易に行動は出来ないわけだよな。
「でも、このままなにもしないで放置していると、何も解決しないぞ?」
「………うっ……それも、いや………」
中々一歩踏み出せずにいる凛明。
……仕方ない。少しだけ背中を押してやるか。
「そうだな……もし凛明が春香ちゃんになにか聞くことができたら、俺特製の弁当を作ってあげよう」
「……なに?」
すると、先程まで悩んでいた凛明の表情が一変し、ギラリとまるで捕食者のような目つきへと変貌する。
「……エイジの、特製」
「あぁそうだ。普段の何十倍おいしい弁当だぞ?食べたくないか?」
「……じゅるり……」
あ、食いついた。凛明がもう完全にあれの目をしている。
「もし作ってほしかったら春香ちゃんとちゃんと話し合って、仲直りしてくるんだぞ」
「……ん。頑張る。俄然やる気が出てきた」
そう言って不安は何処に行ったのか、完全に消え失せて凛明の表情はいつも通りに……いや、いつも以上にメラメラと燃えていた。
これ、大丈夫?仲直りからお弁当に目的をシフトしてないか?
「……エイジ」
「ん?」
「……ありがとう。少し、勇気がでた」
「……それならよかった」
どうやら心配はいらないらしい。彼女は笑みを浮かべてこちらを向いて感謝を伝えていた。
「……そろそろ歌の練習……エイジ、付き合って」
「あぁ。それならお安い御用だよ」
そうしていつも通りに戻った凛明と一緒に今日も新曲を歌う練習をするのであった。
◇
「そんじゃ、今日もよろしくね〜メガネ」
翌日の学校の放課後にて。今日もいつも通り、パシリの如く投げ捨てるパリピ。
それに対して春香は何も反論せずに彼女の言葉に従う。
できることなら、高校で初めてできた友達の凛明と一緒に遊びたい。彼女に反論して真っ先に凛明の所に向かいたい……それに……あの人のことも……でも。
(……反論、できるわけない)
諦めの感情を宿しながら心の中で呟く。
自身の弱みでもある秘密を握られ、何も逆らうことができない。
もし自身の秘密を学校中にばら撒かれるようなことがあれば……自分は今度こそ、一人になってしまう。
もう
「……大丈夫。約束、約束だから」
自分にそう言い聞かせるように彼女は独り言を溢し、今日もパリピのために僅かに残っているお小遣いでお店に行こうとする。
「……春香」
ドキッ!
心臓の鼓動が早くなる。それを表に出さないようにしながら、ゆっくりと後ろを振り返る。
「……凛明ちゃん」
そこには今自分が最も会いたかった人物が目の前にいた。
いつも通り、凛明ちゃんは無表情だがそれが自分の心を安心させてくれた。
「……ご、ごめんね。私、最近忙しいから」
本当の気持ちを抑えつつ、その場から離れようとする。
「……春香」
だが、教室から出ることは出来なかった。彼女に腕を掴まれてしまったからだ。決して解けない程でもない、優しくも意思のあるその手で。
「……話がしたい」
そして、彼女の目は……まっすぐで、とても私には直視が出来ないほど輝いてる用に見えた。
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