第109話 テストと疑惑
凛明の学校のテスト期間が始まってから数週間が経った。
学校が終わる時間が短いため、二人は毎日この家で勉強していた。
「……あの子、なんか見たことあるんだよね……」
だが、俺はずっと気になったことがあった。春香ちゃんのことだ。
来てくれて早々に食器を洗ってくれたり、凛明だけではなく俺の分まで作ってくれたりもしてくれた。
その度にお礼はしてるんだけど……何故か敵意を向けているような、そしていつも意味深なことを呟いたりしていたのだ。
それがどうにも気になって……俺は椅子に座って項垂れていた。
「……凛明によると、確か今日学校ってテストだったんだよね」
――何もないといいけど。
そう思いながら俺はしばらく考え込むのであった。
◇
テスト期間から数週間が経ち、今日学校ではテストが行われていた。
1日目はどうやら春香が苦手だと言っていた数学や物理などに理科系が中心だったが果たして。
「……春香。今日のテスト、どうだった?」
「うぅ……な、なんとか欠点は逃れたかも。でも前よりも出来た感じはするよ」
机に項垂れながらも、前よりも出来たと言う春香。凛明はそれに対して思う所はあれど何も言わなかった。
「凛明ちゃんはどうだったの?」
「……ん。完璧。なんとかなった。ブイブイ」
そう言って凛明は春香に向けて勝利のvサインを送っている。その可愛らしい仕草に思わず頬が緩んでしまうのと同時に尊敬の念を抱いだ。
「……でも、明日は苦手な教科……特に歴史……少し不安」
「そ、それでも80は取ってなかったっけ凛明ちゃん?」
「……そうだっけ?」
あまり記憶にない凛明を見て改めて彼女の凄さを思い知ることとなる。
前期にやった定期テストでは、彼女はどれも高得点。先程苦手だと言っていた歴史でも80は取っていた。
歌も出来て頭もいい。そんな凛明のことをこうして本格的に関わる前から覚えていたのは無理なかったのだ。
「……歴史は頭の中に積み込む。春香、今日も私の家でやるよ」
普段とはまるで違うやる気を示している凛明。
そんな彼女にまたまた微笑みを浮かべて眺めている春香。そうしてそろそろ帰ろうとしていた時……。
「随分とうるさいわね。もう少し大人しくしてくれない?」
目の前には派手な格好をした女子……パリピが目の前にいた。
それを見た凛明はいつも通り素通りし、春香もそれについていこうとするが……まるで通さんと言わんばかりに目の前に立ちふさがる。
「……邪魔。どいて」
「あんたに用があるわけじゃないのよ。今用があるのは……おいメガネ」
「ッ!……な、なんですか?」
パリピの視線が春香に向けられ、身体がビクリと跳ねながらも相手の目を見て反応を返す春香。
「あんた、最近随分と調子に乗ってるそうじゃないの。そこにいる無口がいるから?ん??」
「……春香、行こう。こんな奴、相手にする暇なんて無い」
怒りを宿しながらもなんとかそれに耐え、春香の手を握って教室に出ていこうとする二人だが、パリピは春香に近づき、耳元でなにかを囁いた。
「ッ!?」
それを聞いた春香は青ざめ、対するパリピは口元を歪ませていた。
「そんじゃ、よろしくね〜。これ断ったらどうなるか……分かってるよね?」
最後にそれだけ言ってパリピは二人から後を去っていった。
「……なにあいつ……春香、早く行こう。時間が勿体ない……春香?」
凛明がそう声をかけても、彼女は顔を俯いて反応を示さない。そうしてしばらく時間が経った時……彼女は困ったような笑顔をして凛明に返した。
「……ご、ごめんね凛明ちゃん。私、少し用事があるから今日は家に帰るね」
「……え、でも今日は」
「そ、それじゃ!時間ないからまた明日ね!!」
「……あ」
言葉を返す暇もなく、凛明は走り去っていく春香のことを見送った。
「……どうしたんだろ……春香」
一瞬、パリピの事やこの前言われた圭介の言葉が脳裏に浮かぶ。
「……だめ。友達にも……隠し事の一つや二つある」
頭を振って疑うのはよくないと考えた凛明は事情があるのだと察して今日は一人で帰路を辿ったのであった。
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